消えた光/アリスに託された思い
「志貴さん...手の中にあるもの....みせて」
だれもが、棗に向かうと思っていた。
それなのに、蜜柑は言った。
「ウチ、気づいてた。
見て見ぬふり、できひんよ....っ」
みんな、悲しくて、悲しくてたまらなかった。
選べるわけがない。
2つとも大事な命なのに....
苦しくて、やるせない気持ち。
なぜ、どっちも救えないんだろう。
どっちも救う道はないのか.....
志貴はゆっくりと手をひらいた。
そこにあるのは、深い濃紺のアリスストーン。
しかし、詩のアリスストーンを見たことがある者たちはその違いに気づく。
詩のアリスストーンよりもそれは、もっと深く、重厚感のある色をしていた。
それでいて、とても存在感のある、不思議な石。
「志貴さん、これって....」
殿が、みんなの気持ちを代弁する。
志貴は静かに言った。
「これは、詩の祖父の石だ」
「え...」
「詩の、祖父...」
過去でみた、あの人。
詩の、本当の家族と呼べる存在。
その人物も確かに、式神のアリスだった。
皆、なぜその石がここにあるのかと疑問に思うのは同じだった。
「私と柚香は、学園を出てZとして活動していた時、詩の祖父に会っていた。
それは柚香のもつ盗みのアリスと、私の結界のアリスが引きあわせた偶然だった」
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