このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

消えた光/アリスに託された思い



「この棗のアリスストーンを、彼の中に入れるんだ」

高校長は、棗の手元にあったアリスストーンを蜜柑の前に差し出す。

「蜜柑の母、柚香が死神と呼ばれた学生時代....

こころならずも彼女は、死にゆくものからアリスをとりあげ、結果彼らの死期を早めた。

だとしたら、その逆も可能性がないわけではない。

柚香の犯さざるをえなかったその行為の逆を、同じ力をもつ娘の君がやることで、何か運命めいた奇跡がおこることを

不確かでも、今はこの希望にかけるしかない。

あの頃の柚香の無念が晴れてくれれば....

....そして蜜柑、その前に君に大事な話が」

蜜柑はその後の高校長の話は聞かず、すぐに棗のもとに向かう。






....しかし、その力は無情にも出なかった。







「...蜜柑、君の中にもう、アリスは存在しない」

高校長の静かな声が、その場に重々しく響いた。

蜜柑はまた、涙がとまらなかった。

一番必要な時なのに、希望が、そこまでみえていたのに.....っ

それでもなお、高校長はまっすぐな目で話し続けた。

「蜜柑、君にはまだ体内に戻すことのできる、君自身のこのアリスストーンが残っている」

棗がもっていた、交換した、それ。

「ただ、この石の力を使い切れば、君がアリスとしてこの学園に残れる可能性は一切なくなる」

そういわれても、蜜柑の答えはひとつにきまっていた。

自分の何に変えてでも、救いたい人が目の前にいるのだ。







そんな蜜柑をみて、##NAME1##はあることを言い出せなかった。

志貴の手に握られたそれ。

殿も、気づいていた。

志貴の視線にも首をふってこたえた。

言えない。

言えるわけがない.....

棗と同じ可能性が、詩にも残っているなんてことを。

でも、蜜柑の残されたアリスで救えたとしても1人だけという事実は、残酷すぎた。

蜜柑にこんなの、選ばせるわけにはいかない。

##NAME1##は、詩の冷たくなり始めた手を握り泣いた。

―詩....だいすきな詩....

あきらめたくない、でも.....

##NAME1##の想いに、殿は動けなかった。










.
2/7ページ
スキ