消えた光/アリスに託された思い
「この棗のアリスストーンを、彼の中に入れるんだ」
高校長は、棗の手元にあったアリスストーンを蜜柑の前に差し出す。
「蜜柑の母、柚香が死神と呼ばれた学生時代....
こころならずも彼女は、死にゆくものからアリスをとりあげ、結果彼らの死期を早めた。
だとしたら、その逆も可能性がないわけではない。
柚香の犯さざるをえなかったその行為の逆を、同じ力をもつ娘の君がやることで、何か運命めいた奇跡がおこることを
不確かでも、今はこの希望にかけるしかない。
あの頃の柚香の無念が晴れてくれれば....
....そして蜜柑、その前に君に大事な話が」
蜜柑はその後の高校長の話は聞かず、すぐに棗のもとに向かう。
....しかし、その力は無情にも出なかった。
「...蜜柑、君の中にもう、アリスは存在しない」
高校長の静かな声が、その場に重々しく響いた。
蜜柑はまた、涙がとまらなかった。
一番必要な時なのに、希望が、そこまでみえていたのに.....っ
それでもなお、高校長はまっすぐな目で話し続けた。
「蜜柑、君にはまだ体内に戻すことのできる、君自身のこのアリスストーンが残っている」
棗がもっていた、交換した、それ。
「ただ、この石の力を使い切れば、君がアリスとしてこの学園に残れる可能性は一切なくなる」
そういわれても、蜜柑の答えはひとつにきまっていた。
自分の何に変えてでも、救いたい人が目の前にいるのだ。
そんな蜜柑をみて、##NAME1##はあることを言い出せなかった。
志貴の手に握られたそれ。
殿も、気づいていた。
志貴の視線にも首をふってこたえた。
言えない。
言えるわけがない.....
棗と同じ可能性が、詩にも残っているなんてことを。
でも、蜜柑の残されたアリスで救えたとしても1人だけという事実は、残酷すぎた。
蜜柑にこんなの、選ばせるわけにはいかない。
##NAME1##は、詩の冷たくなり始めた手を握り泣いた。
―詩....だいすきな詩....
あきらめたくない、でも.....
##NAME1##の想いに、殿は動けなかった。
.