消えた光/アリスに託された思い
「脈は?!」
「まだ止まってる」
「心臓が止まってからどれくらい...?!」
「仮死状態....出血もひどい」
息のない詩と棗のまわりには、みんな集まり、必死な蘇生が行われていた。
昴は棗につき、櫻野はコピーのアリスで詩に治療する。
殿は2人に増幅のアリスで力を与えていた。
「小泉さん!
詩の、詩のアリスストーンがまだどこかにあるはずだろ!
どこにあるんだ!
教えてくれ!!」
アリスを使いながら、殿は言う。
みんなも、一筋見えた光にはっとした。
しかし、対称的に月の顔は曇っていた。
言いにくそうに、今にも泣きそうに口を開く。
「詩のアリスは....
初校長がすべて....
取引や、他のクローンたちのもとへ渡らせ、使い、今この学園には.....ない」
これ以上の絶望があるだろうか。
嘘だと、言ってほしかった。
どれだけ、下衆野郎なんだ....
今はもう、抜け殻の彼に何を言っても届かないだろう。
「なんで!なんでとめなかったの?!
詩のアリスの形知ってたでしょ?!
なんでよ...っ」
##NAME1##はとまらない涙をふくことも忘れ、初校長を抱きかかえる月につかみかかった。
「ごめんなさい...っ
ごめんなさい....っ
私も、初校長から取引相手に届けるように頼まれた石を、詩に届けるだけで精一杯で。
それ以外の石は、触れることすら許されなかった....っ」
詩の戻ったアリスの経緯を知り、##NAME1##は黙るしかなかった。
きっと、月ができることはすべて尽くしたんだ。
そんな彼女をもう、これ以上責めることはできない。
##NAME1##は絶望で、立ち上がれなかった。
そこへ、志貴と高校長も到着する。
「初校長がああなった以上、契約についてはもう大丈夫。
治療に尽力しよう」
そう言った志貴の手に握られているものを、##NAME1##は見間違えるはずがなかった。
その手にあったのは、藍色のアリスストーン.....
高校長もまた、棗の手に握られた2つのアリスストーンに気づいた。
しかし2人とも、今から話さなければならないことを思うと、苦しさでいっぱいだった。
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