終局/すべてを懸けて
光が収まるのと同時に、炎が消え、式神もはらはらと床に落ちた。
「初校長っ」
「急いで救護班を!」
「よくご無事で...」
初校長側も慌ただしく動き出す。
「##NAME1##ちゃん!手が!」
殿はすぐに##NAME1##を久遠寺から引き離す。
炎に触れた手が、火傷で痛々しそうだった。
蜜柑もまた、強いアリスを使いその反動で気絶していた。
翼がそれを支える。
こんな状態だというのに、いまだ久遠寺の目の暗い光は消えていなかった。
「...がすな...っ
あいつらを決して逃がすな。
捕まえろ!!」
「この...クソ野郎!!
生徒の命より、自分の妄執かよ...っ」
みんなの制止をふりきり、今度は翼が久遠寺へ向かう。
「翼せんぱっ」
蜜柑が気づき、その名を呼んだときだった。
「もう、やめてください。
初校長...」
久遠寺の後ろにまわりこみ、重症の彼をおさえつけたのは、月だった。
「...昔から、あなたが自分のことしか愛せない哀しい人であることは、気づいていました。
だけどずっと、見ないフリをしてきた。
捨てきれない、一縷の望みを持ち続けていたから....」
皆、静かに月の言葉をきいていた。
「初校長、私はあなたのことが何よりも大事な存在でした。
だから、どうか安心してください。
私のアリスで、おぞましく変貌を遂げ続けた生への執着から、解き放たれてください。
このまま逆成長し続けて、いつか何もわからなくなる赤ん坊になって、息絶えるその時まで、私が見守ります。
それが私の、あなたの犯した罪を贖う唯一の道です...」
そう言って、月は久遠寺の首筋へと唇をつけた。
すがることでしか自分を守ることができなかった。
愛情表現を間違え続けた。
それでも、あなたたちは私を見捨てなかった。
今ならわかる....
ごめんね、柚香ちゃん....
初校長は、倒れた。
その目は空洞で、野心に満ちたあの漆黒の光は消えていた___________
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