終局/すべてを懸けて
「ルナ。
お前は...お前だけは裏切らない。
レイのように...そうだな?
そうだと、言ってくれ」
深手を負った久遠寺の背中は、いつもより小さく見えた。
それは柚香が入れたアリスのせいだろうか。
それとも....
「はい...初校長」
月はその後のことは考えぬようにして、頷いた。
手駒として操ってきた、敵の戦力になることを一番恐れたアリスをもつ、詩への脅しが効かなくなったこと。
追い打ちをかけるような、生徒や教師たちのテロ行為。
最も手に入れたかった盗みのアリスをもつ、蜜柑の脱走。
そして、幼いころから自分のもとを離れることはないと確信していたペルソナの寝返り。
すべてが脅威となって、立ちはだかっていた。
それでも、ここで止まるわけにはいかない。
ここで、今まで長い年月をかけて積み上げてきたものが潰えてたまるものか。
「地下シェルターへの避難は!?」
「それが...いつのまにか強力な他者による結界が張り巡らされ、何度テレポートをしてもはねかえされるのです」
「志貴...っ
あの男....っ」
久遠寺の顔は、また忌々しげに歪んだ。
もう彼をとめるものはいなかった。
そして、とうとう、その時が来た。
―ザッ....
テレポートで潜伏先に現れたのは、テロの中心人物たち。
詩をはじめとして、久遠寺の前にたちはだかる。
「見つけた....!」
みんなの表情も引き締まる。
「逃がすな!」
そういうか早いか、詩と棗はもう自分のアリスをまとい、動き出していた。
「詩!」
「棗!」
その攻撃に、すべてがかかっていた。
久遠寺の顔はさらに増して歪みひきつる。
ーやっと、この時がきた。
待ち望んでいた。
あの時からずっとこの日まで。
久遠寺と対峙するたび、何度、こうしてやりたいと思い描いてきたか。
それがやっと、かなう。
湧き上がる感情を押さえつけ、地に頭をこすりつけるよな日々を耐え、久遠寺に従ってきた。
あの日の先生の仇を、今まで苦しめられてきた生徒たち苦しみを、ここで断ち切る。
このために、学園生活を犠牲にしてきたんだ。
どんなことも我慢してきたんだ。
ああ、やっと、解放される時が来た。
この呪縛に______
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