差し出した手/踏み出した一歩
「佐倉さん、何でここに...っ」
「##NAME2##まで...っ」
蜜柑は、思わずのばらのもとへテレポートしてしまっていた。
治療室にいた櫻野と昴は目の前の状況に驚き、目を見開く。
「テレポートか...でもあの迷宮棟には強力な結界が」
言ってから櫻野は納得する。
「ごめんなさい。
蜜柑ちゃんをとめたかったけど、間に合わなくてっ」
「##NAME2##の結界で、結界やぶりの裂傷を負わずにすんだか」
昴はつぶやいた。
「それよりも君、大変なことを....
このことが、初校長に知れたら...」
しかし、そんな櫻野の言葉は蜜柑の耳に入っていなかった。
お願いのばらちゃん、目を開けて...
いかないで、どうか
戻ってきて....っっ
蜜柑はその場にいた者たちを押しのけ、すでにそのアリスを発動させていた。
何を引き換えにしてでも、のばらちゃんの命を引き戻す......っ
もう誰も、死ぬところをみたくない!
「今井、治癒のアリスストーンを佐倉さんに。
今の彼女に何を言ってももうとめられない」
櫻野も、腹をくくっていた。
そして一刻を争う処置を切り抜け、のばらは、一命をとりとめた。
「もう、大丈夫だ。
君のアリスが彼女の命を救った...」
昴のその一言に、蜜柑は安堵のため息をもらした。
その様子をじっと見つめていたペルソナ。
「ペルソナ、ただちに佐倉蜜柑の捕獲を!
初校長命令です、再び逃亡する前に!」
その言葉に、緩みかけていた緊張感は一気に張り詰める。
いつの間にか蜜柑たちは、ペルソナを中心とした風紀隊に囲まれていた。
「脱走の罪により、君を連行しにきた」
風紀隊のひとりが通告する。
「抵抗しなければ、こちらも危害を加えるつもりはない。
さあ、おとなしくこっちに来るんだ」
しかし、何か強い力が蜜柑たちを包んだ。
それに櫻野はいち早く察し、##NAME1##をみて頷いた。
「佐倉、君をこのまま彼らの手に渡すわけにはいかない。
この場は僕らがなんとかする」
昴も##NAME1##が張った結界と、闘う意思に気づいたようだ。
「蜜柑ちゃん、テレポートで姫様のもとにいって。
蜜柑ちゃんがアリスを使うことによって生じた結界の波動で、きっと志貴さんはこの状況に気づいている。
でも、ことこの件に関しては初等部校長と命を懸けた契約を交わした以上、目立つ形で私たちの援護はできない。
私は志貴さんほどの結界使いではないけど、きっと守ってみせる。
どうか、逃げて...っ」
「でもっ」
自分だけ逃げるのはと、言おうとした蜜柑を櫻野は制す。
「決して、初校長の手に君の力は渡ってはいけない。
仲間が死力を尽くしてこの学園の悪を滅ぼしにかかるそのためにも、君が逃げぬくことこそが、彼らの唯一の希望になる。
彼らの、この学園の未来のためにも、君は絶対に捕まってはいけない!」
テレパシーで詩の動向を察していた櫻野は詩をはじめとしたみんなを思い、強く言った。
学園の総代表を務めあげた櫻野の言葉は、確かに重く響いた。
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