差し出した手/踏み出した一歩
「のばらちゃん...どうして...どうやってここに...」
部屋の中の蜜柑は、外の喧騒とは別に、困惑していた。
そして、目の前ののばらの異変に気づく。
のばらの体は、透けていた。
ーこれは、のばらちゃんの魂...!?
じゃあ、病院にいるのばらちゃん本人は...?
ー蜜柑...ちゃん...ありがとう...今まで....
心に響くようなのばらの声。
俯き、悲しそうに涙をためるのばらはただの虚像には見えなかった。
一方の病院では、のばらの心肺が停止し、賢明な蘇生が行われている最中だった。
ペルソナが見守り、昴の治癒と、櫻野のコピーのアリスを中心に治療室は慌ただしさを増していた。
蜜柑の部屋の外では、##NAME1##の強力な結界の援護のもと、危力系が敵をあっとゆうまに制圧していた。
敵を倒し終えたと思った矢先、陽一が何かに導かれるように、蜜柑のいる部屋の扉をどんどんとたたき始める。
「よーちゃん?!
だめよ、そのドアは私たちではあかないのよ」
ルイがそう言うも、陽一はきかなかった。
そこで##NAME1##ははっとする。
同じ結界使いの姫宮とのつながりで感じ取る。
「何か...感じるの?」
陽一にきいたのと同時に、咄嗟に思った。
蜜柑をとめなければ。
姫宮の力もあってか、別段大きなアリスを使わずとも、扉は手をかけただけで容易に開いた。
「の...のばらちゃん?」
誰かと声が重なった。
そこで皆、なんとなく察した。
「のばらちゃんの容態...っ」
ルイの顔がひきつっていた。
蜜柑もまた、目に涙をためていた。
「行ったらあかん....っ
消えたらあかん...っ」
そのあとの蜜柑の行動を察しても、とめるには誰もおいつかなかった。
ただひとり、##NAME1##をのぞいて。
ー蜜柑の君を...止めよ...
そんな姫宮の声に、反射的に動いていた。
「だめーーーー...っ」
そんな蜜柑の声とともに、##NAME1##は蜜柑の腕をつかんでいた。
しかし、アリスを発動するまでの時間はなかった。
蜜柑と##NAME1##は、蜜柑のテレポートにより危力系のみんなの前から消えた。
「##NAME1##ちゃん...っ」
ルイの声だけが、そこに虚しく響いた。
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