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反撃の狼煙



「―愚か者はお前だ.....」





突如ホールに響いた声。

レオ実行のニューイヤーコンサートの作戦が失敗かと思われた最中だった。

突然の暗闇に、生徒たちはパニックになっていたものの、聞き覚えのある声にはっとする。




「フェロモンガードごときで、お前が幼少の頃から長年目をつけさんざん利用し続けてきたこの力を攻略できると思ったか。

見誤ったな.....

......初校長......」





「鳴海.....

貴様.....っ」





鳴海は毒爪を初校長の首に食い込ませ、冷たい口調で言った。

普段の鳴海じゃないことくらい、生徒たちもわかった。

鳴海は次々と脅しの文句を並べ立てた。

そして初校長を追い込んでゆく。

徐々に鳴海の目的を察した鳴海に近しい関係の者たちは、それをとめようとするも、彼の覚悟の上でそれは皆無だった。

そして鳴海は、自分の胸中を語り始める。




「....ここにいるみんな、

いや、学園中のみんな......

しばらくの間フェロモンを使わずに、私が今から話すことにどうか耳を傾けて欲しい。

私は今まで君たちにとって、いい教師では決してなかった。

長い間この学園に巣喰う悲しみの連鎖を断ち切ろうともせず、ただ見て見ぬフリし続けてきた。

そのことをどうか、謝罪させて欲しい......。

そんな私を変えてくれたのは、1人の女性...

そして多くの同胞の死、

何より多くの悲しみを抱えても尚、強い瞳で犠牲をいとわなかった1人の少女....

どんな困難にも立ち向かい自らの運命も、他人の運命をも切り開こうとした彼....

彼ら、彼女らの強さが、愚かな私に力をくれた。

彼らの命がけの願いを受け継ぐ勇気を....

もう遅すぎたのかもしれない。

でも、それでも私は君たちを守りたい。

この学園の未来を、勝手な思いと思われるかもしれない。

あきらめたくない.....っ

勝手な行動とも....

でも私はどうしても伝えたい。

なぜなら学園に君たちを取り巻く大人たちにこれ以上絶望してほしくない。

君たちのことを、君たちの未来のことを、過去から....

そして今も心から、学園が笑顔でいっぱいになる日を願って、そんな希望を絶やすことなくその身を投げうっていった彼らの想いに君たちが強く守られていることを.....

どうか、忘れないで欲しい。

どんなに....殺伐とした環境であっても、君たちは1人1人ちゃんと、誰かのあたたかい想いにくるまれていることを、

それを忘れて生きていくことがどんなにむなしく愚かしいかを、これまでの私の姿と共に、心に焼きつけて欲しい。

そして、そんな彼らをおとしいれ悪事に邁進し続け、未だつきまとう汚名を彼らにかぶせた張本人の初等部校長を、

私は決して許さない....生徒たちの人権を無視し、多くの人の人生を奪い、

クローンのアリスで手に入れた権力を守る為にあまつさえ自作自演の悪の組織Zで更に利権をむさぼり、

自分の危うくなった立場を立て直す為に今、生徒の危険をかえりみず、こうして恥知らずにもZを学内に引き入れたこの男がいる限り、

悪の根はいつまでもはびこり続ける。

誰かがそれを断たねばいけないのなら、

.......私がやる!」






鳴海の言葉は、確かに、みんなの心に伝わった。

生徒たちはもちろん、教師にも。

蜜柑も、ライブ映像で聞いていた。

それと同時に、鳴海が人殺しになるのがたまらなく嫌だった。

止めたかった。







「ナル、お前のこと初めてかっこいいと思ったよ」

そして、そう、物陰で呟く影があった_____











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