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反撃の狼煙



「月さん」

呼びかけに、月はゆっくりと顔をあげる。

目の前にいたのは五島。

「何よ。

あんたはとっくに今日の任務に向かったと思ったけど。

酒をやめろとでもいうのなら、さっきも言われたわよ」

月の姿は異常だった。

ガリバー飴の副作用で体が縮み、連日の大量のアルコール摂取により、お世辞にも健康とは言えなかった。

周りが心配するのも無理ないだろう。

でもその心配さえ、月には鬱陶しく感じるのだった。

ほっといてほしい、もう誰も、関わらないでほしい。





「いえ、僕はただ、これからあなたがどうなさるのかと、気になったので」

「それを聞いてあなたの何になるというの」

「僕が初校長に逆らうことができないのはあなたも知っていることです。

でも、月さんは違う。

自分の意思で初校長についている。

しかしあなたの行動は矛盾している。

東雲 詩へ石を返したのは、彼に少なからず希望をもっているから。

彼は言いました。

必ず僕を救ってくれると。

それは僕だけに言われた言葉ではないはずです。

彼にすがりたいなら、彼という光を信じたいのなら、そろそろ自分に正直になられてはどうですか」

「黙って!

あなたに何がわかるっていうの!」

「月さん、あなたが一番わかっているはずです。

二度と、柚香さんの時みたいにならないように!」

五島の強い口調に、月は気が抜けたように黙った。

「時間なので、僕はこれで失礼します。

少なくとも今回のことで、多くの運命が変わります。

僕は、自分で運命を変えることはできない。

でも、あなたは違う」

そう言い残して、五島は部屋を出て行った。

今日もまた、意思とは関係なく体が動き、言いたくもない言葉が口からすらすらと出るのだろう。

次第にそんな苦しい気持ちも、月に完全に操られてしまえば消えてしまう。

月は、少しアリスを緩めたことを後悔していた。

ーもう、私だって後戻りできない....










今日は、初校長主催のニューイヤーコンサート。

また学園に、嵐が来る。






―柚香ちゃん.....

あの死に際の時なぜ、最後の力をふりしぼって私に声をかけたの....?

あんなに優しいまなざしで.......

幼い頃、同じ境遇に堕ちたと思っていたあなたが私とまったく違う道を歩み、その手にいくつも愛を手にする姿を見るにつけ、

いつしかそんなあなたを憎しみ続けることが私の生きる力になっていた。

アリスだとわかったその日から私はずっと、闇の中1人ぼっち.....

遠くに明るく灯ったたくさんの光に憧れて、必死で追いかけては皆逃げていき、手元に手繰り寄せたと思えばすべてそれはすべり落ちていき......

いびつだと分かっていても最後に残ったこの光が消えてしまうのが怖くて、だから私はあなたを憎んだ。

心の奥で間違っていると分かっていても、憎むことが手の内の光を灯し続ける唯一の道だった.........

柚香ちゃん、私はあなたがうらやましかった。

あなたになって、皆に愛されたかった.....

離れていたあなたを憎んでしまうくらいに..........

あなたのあのまなざしが、あの最期の時だけでなく、

ずっと昔から私に向けられていたことに気付かないくらいに.........













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