孤独/退屈な冬
五島が去った部屋の中。
詩はひとり、自分の手中を見つめていた。
そこには、藍色の石。
詩のアリスストーンが3つ。
ぎゅっと、握り締めた。
無意識に目を閉じていた。
アリスが自分の体に戻るこの感覚。
生命力がみなぎり、生きる源が補給されるよう。
だいぶ体もラクだ。
自分を取り戻せたようにさえ感じる。
すべて戻ったわけではないが、今の自分には十分なエネルギーとなった。
五島を思い出す。
最後のあの表情、何か助けを求めるようなその表情。
時々、五島本人じゃないかのように陰る瞳。
五島、お前のことも必ず救ってやる。
.....月先輩。
あなたはどんな意図をもってこの、自分にとって不利な危険を犯したのか?
もう、わかってるんでしょう?
はやく、目を覚まさないと手遅れになってしまう。
あなたはとても可哀想な人。
さぁ、もうやることは決まっている。
来たるときまで体力温存につとめよう。
きっとこれが、最後の戦いになるだろう。
いや、最後にするんだ。
もう自分の覚悟は決まっている。
学園を変える。
学園を、守る。
戦いが終わって、学園に平和が戻るのを見届けるまで俺は、死ぬわけにはいかない!
自分のアリスも、絶対取り戻す!
あいつを、絶対に許さない。
地獄に叩き落すのはこの俺だ。
今まで、このためにあいつの下にいた。
この時をうかがっていた。
そしてやっとその機会がきた。
対峙するたびに、いつだってその首筋を式神で掻っ切りたい衝動にかられていた。
あいつから噴水のように噴き出す血を見るまで、俺はお前のそばでその機会をうかがうと、決めたのだから。
詩の顔は、今までにないくらい恐ろしい形相だった。
それは悲しいくらい、冷たい顔。
式神を我を忘れて使う任務の時の顔だった。
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