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孤独/退屈な冬



「どうかな?体の調子は」

優しい表情でこちらを見つめる彼。

「志貴さん...っ」

慌てて起き上がろうとした詩を、志貴さんは「そのままでいいよ」と制した。

「すいません」

そう言って詩は体をもとに戻した。

実に2週間ぶりの訪問客。

純粋に嬉しかった。

アリス学園はもう冬景色。

この孤独な生活にも慣れつつあった。







「志貴さんも忙しいのに俺なんかのために.....」

申し訳なさそうに言えば、

「何を言ってる。君らしくないな。

君はそんなことより体調に気を使うといい」

と返ってくる。

志貴は詩にとって、あの時から憧れの存在となった。

雰囲気、存在感、周りからの信頼、決断力、統率力、それらすべてにおいて、カリスマ性を感じた。






「やはり体調は思わしくないか?」

厳しそうな表情で志貴は問う。

「せっかく来てくれたのに医者みたいな話はやめましょうよ」

詩はそうやって軽くその話題を流した。

「それもそうだな。

まったく、君にはペースを乱される」

志貴は ははっと笑みを浮かべる。

「....志貴さん、危力のやつら....特に棗はどうですか?」

その問いに志貴はふっと笑った。

「本当に君はそのことばかりだね。

今くらい危力系総代表という肩の荷を降ろしてもいいのに......」

「そうはいきませんよ。あいつらを預かったのは、俺だから」

そうまっすぐと言う詩に、志貴は感心していた。

自分が柚香と学園を出た後、行平の意志を継いで形にした詩。

危力系創設は、学園の前進に、間違いなく一役買っていた。






「......危力系はいつも通り姫様を困らせてはいるが、元気にやってるよ。

日向棗は....やはり君の言った通り、こちらの言う事を素直に聞くようなこではないな。

毎日蜜柑を探し歩いてる」

「そうですか....」

詩は一瞬曇った顔をみせたが「あいつらしい」と笑った。

危力系の仲間も頭に浮かべているのだろう。

「蜜柑の様子はどうですか?」

次に詩はそう聞いた。

「....ああ、本当にあのこは健気だ」

志貴がおだやかに言った。

「逆境でも決してへこたれず笑っている。

そういう意味では、君と蜜柑は似ているな」

「俺と蜜柑が?」

詩はびっくりした様子で言った。

「ああ」

「そんな、俺が蜜柑と似ているなんて」

くすっと詩は笑った。

そこには嬉しさが混じっているようだった。






蜜柑、お前は元気にやってるようで安心した。

こうやって志貴さんから話を聞いて、学園のことを頭に浮かべる時間はほんとに楽しい。

蜜柑も、そんな時間を過ごしているだろうか?

お互い今は苦しい時間だけど、いつか光は見えてくると信じて、いつものように希望をもつことをあきらめずに、

今日も明日も明後日も、朝を迎えよう。

昨日とは違った未来があると信じて。












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