喪失感
志貴さんが、初校長と交わした契約。
その中で俺は身柄を初校長に受け渡されたわけだが、
志貴さんの配慮から、俺の最低限の生活は保障されるよう、細かいことも決めてくれた。
―まず、今回で負ったケガの治療をきちんと受けさせ、十分な休養を与えること。
―罰則やその他いかなる理由でも東雲詩に肉体的苦痛を与えないこと。
―アリスのタイプから、今後一切任務を強要しないこと。
―面会できるのは初校長、月、志貴、そして鳴海。
学園生徒との面会はもちろん許されない。
しかし、初校長預かりとする理由は蜜柑とは別なので、面会については少しばかり蜜柑よりも優遇されていると言ってもいいのかもしれない。
今回の件に関わった鳴海との面会が許されたのだから。
ちなみに、任務放棄と任務監督への反逆行為が詩の初校長預かりとされる理由だった。
そして、細かい契約内容の中に志貴が提示するものがあれば、もちろん初校長の提示する条件もある。
―危力系総代表を一時的に退くこと。
期間は無期限。
後任は棗となったそうだ。
しかし以前と違って仕事内容はあまりないという。
―アリスストーンは、今回の件の罰則及びいまだ初校長への反逆精神有りと判断され返還見送り。
生命の危機の場合のみ一部返還とする。
―指定された部屋から出ることを禁ずる。
それを犯した場合、一生アリスストーンは戻らない。
.....詩は今日も同じ部屋で目を覚ます。
今は治療のため殺風景な病室のような部屋だが、よくなれば部屋が移るという。
だけど、最近はすこぶる体調が思わしくない。
ケガはほぼ完治しているが、ここずっと怠惰感がぬぐわれない。
ベッドから出れない日もあった。
少し動いただけで疲れてしまう。
これも、自分のアリスのタイプのせい。
自分の中にあるのは実質、アリスストーン1つぶんのアリスなのだから無理もない。
少しでも使えば命の灯は消える。
これで、初校長の脅威となるものは1つ消えたというわけか。
まあ、ダルイのも自分の気持ちが一番関係しているのかもしれないい。
話し相手がいなければ笑うこともないのだからつまらない。
幽閉されて1ヶ月で詩の気持ちは早くも落ち込みかけていた。
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