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喪失感



柚香さんの葬儀は、学園内で行われた。

その日は、雨だった。

静かに、悲しく、いとなまれた。

そこに俺は、参列することを許可された。

そしてそれが柚香さんとの最後の別れと同時に、みんなとの別れでもあった。






俺は、蜜柑のそばに寄った。

「詩先輩.....」

つぶやく蜜柑に、目線をあわせ、頭にぽんと手をのせた。

出会ったときより少し大きくなったな、と今更ながらに気づいた。

蜜柑は、柚香さんの葬儀で泣くこともできなかった。

そんな蜜柑に、俺はいつもの笑みを向けた。

これ以上、蜜柑の心に重くのしかかるようなことを増やしてはいけない。

少しでも今できることをやらなければ。

でも、かけてやる言葉は見つからなくて......

少し俯き気味の蜜柑に一言だけ言った。





「蜜柑、元気でな」





蜜柑は、その言葉にぱっと顔をあげた。

そこには、いつものように笑う詩先輩。

精一杯の彼の一言。

何か言わなければと口を開きかけたが、それも遮られた。





「蜜柑、何も言わなくていい。

わかってる」





詩先輩はそれだけ言って、行ってしまった。

そして気づいた。

初等部B組のみんなが、来てくれていることに。

そんなみんなを、心配させないように.....

さっき詩先輩が見せてくれたのと同じように、

蜜柑は笑った。

いつもの笑顔で。





「みんな....っ

またねっ」





詩先輩の真似をしてみたけれど、うまくいっただろうか。

最後に手をふって、蜜柑は初校長のあとに続いた。

その姿を、詩もみていた。





―蜜柑、お前は強いよ......





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