喪失感
―条件はのめない、
.........2つだけ。
「今回の一連の件の原因である、佐倉蜜柑。
そして今回の件の前にすでに問題をおこした東雲 詩。
この2人の引き渡しだけは断固拒否する。
それ以外は志貴、お前の要求をすべて飲む」
―そんな提案誰がのめるか....っ
―よせ蜜柑、考えるな!
―詩、やめてっ!
「ウチ、その条件を受け入れます――…」
蜜柑の強い瞳を見て、詩も決心する。
「俺も、その条件を受け入れます――…」
そして、契約は交わされた____
「すまない、蜜柑....」
志貴さんはそう言ったあと、俺にもしっかり向き直った。
「君も、すまない.......」
「いいんです。
あなたには、学園を守れるだけの力がある。
俺はそう確信したから。
それに、あきらめない限りまだ希望はある」
そんな契約を経て、学園の朝はいつものようにやってきた。
みんなを残し、高等部を出るとそこには月先輩がいた。
月先輩は何も言わずに歩き出す。
俺も何も言わずそのあとを追った。
月先輩は泣きそうな顔だった。
でも、涙を流せない。
そんな人。
その気持ちは痛いほどわかった。
自分の本当の気持ちに気付くのが怖くて、本当の気持ちなんて表に出したくなんかなくて、自分を表現するのが苦手で。
それは、相手にわかってもらえないという諦めからきたもので。
この人も、すごく悲しい人だと詩は静かに思っていた。
.