星空の下(櫻野・今井昴side)
何だか詩は楽しそうだった。
夜の暗い廊下を、見回りのタカハシさんの目を盗んで僕らを案内する詩からは、わくわくしてるのがみてとれた。
思えば、こんな詩は久しぶり。
先生がいなくなってすぐは、詩は大人びて見えたけど、最近は前の詩に戻りつつあった。
それは、任務のせいだってことを、櫻野と昴は知っていた。
決して弱音は吐かないけれど、それがかえってストレスになってるのではないかと、2人は心配していた。
ちょっとしたことですぐにアリスを使って相手を傷つけてしまっていた。
でも前と違うのは、その後詩はひどく後悔して落ち込んでいるということ。
本当はわかっている。
でも、とめられない。
そんな様子の詩を見ているのは辛かった。
詩には、また自分のアリスを恐れてほしくはないと、昴は常に思っていた。
「ちょっと詩、どこ行くの?」
「こっちって外に出ちゃうじゃん!」
そんな2人の言葉は無視して、詩は2人の手を引っ張って廊下を走った。
櫻野と昴はもう、聞くのを諦めて、引っ張る詩に任せることにした。
「着いたよ!」
案の定、詩がつれてきたのは寮の外。
外に着いた途端、詩は2人の手を離して少し開けた場所へ走った。
櫻野と昴は顔を見合わせるが、もうここまで来たんだからと、詩の方へと駆け寄った。
「詩、何だよ見せたいものって....」
昴が問うけど、詩は何も答えない。
かわりに、空を見上げていた。
それをみて、櫻野と昴は一緒に空を見上げた。
「「わぁ.....っ////」」
2人の声が重なった。
見上げた空には、宝石のように輝く、数千億個もの星屑。
その、あまりのきれいさに目を奪われた。
「な、すごいだろ?」
詩は得意げに言った。
「「うん....!」」
素直に2人は声をそろえて言った。
詩はそっと2人の横顔を盗み見た。
夜空だけでなく、星屑を映したその瞳まで、キラキラと輝いてるようだった。
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