親子の再会
詩は、ほっと安心していた。
今目の前で抱き合っている一組の家族の再会。
それは普通よりも何倍も苦しい思いをした末の、温かい光景。
普通よりも辛く厳しい運命を辿っていても、やはり家族の絆は強いものだと、改めて実感させられた。
この再会をこの母子だけでなく、どんなにみんなが待ち焦がれていたか.....
「お母さん...っ
やっと会えた」
そう言って抱きしめ合う姿。
これが本当の、家族......
「ウチ、お母さん大好き。
お父さんも、大好き」
その蜜柑の笑顔が眩しすぎて、詩は直視できなかった。
前髪で顔を隠すようにして、俯いた。
それに鳴海が気づいていた。
「詩...大丈夫か?」
「うん...
なんだかすごく、うらやましくって」
鳴海はもう、何も言わなかった。
詩の家族については耳にしていた。
いくらこの学園のみんなが家族だといっても、本物に勝る感情はないのだろう。
この世に産み落としてくれた親から拒絶された事実は変わらない。
「あんたなんか、産まなきゃよかった!」
こんな時でも思い出してしまう。
そしてまだ、家族を渇望してしまう自分の感情に気づかされてしまう。
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