親子の再会
柚香は、高等部の近くで志貴と再会していた。
蜜柑の気配はもうすぐそこに感じていた。
そんな中、志貴は柚香に〝蜜柑を見つけたならもう鍵穴のドアに向かう必要は無い〟と告げた。
今、中等部の姫宮は弱っていた。
そのため結界も弱まり、今なら志貴の力で学園の結界を突破できるとのことだった。
そんな説明を柚香が受けている時だった。
ザ....
何の前触れも無く、敵がテレポートで現れた。
2人は表情を変え、敵を相手にする。
しかし敵の数は、高等部に近いからか圧倒的だった。
次々と襲い掛かってくる敵。
柚香と志貴は防戦一方だった。
その最中、柚香は背後から襲おうとした敵に反応が遅れた。
その時だった。
―バシュッ
柚香の前に急に現れた人影が、その敵に見事な蹴りをお見舞いした。
その一撃で、敵はその場にのびていた。
柚香は何が起こったのかと、その人影を見る。
「アリス使うよりこっちのがはやいね」
そう言ったのは、詩だった。
アリスを温存したいというのもあった。
詩の奥に見えるのは鳴海。
鳴海のアリスで、すでにすべての敵が倒れていた。
柚香はまず、詩に声をかけた。
「久しぶり、詩。
....詩、あんた変わったね。
こんなに大きくなって」
柚香は、自分より高い位置で視線を合わせた。
前に頭を撫でた時は、本当に小さくて、ほっとけないくらい寂しそうな目をしていた。
そんな日が昨日のことのように思える。
「強くなったのね、詩。
.....先生にも、この姿見せたかった」
寂しげに、柚香は言った。
「見てますよ、先生はいつだって。
俺のことも、柚香さんのことも、この学園にいるみんなのことも」
「え...?」
疑問符を浮かべる柚香に、詩はやわらかく笑った。
「詩も、そんなふうに笑えるようになったのね」
安心したように柚香は言った。
「....全部、先生や柚香さんのおかげです。
あの頃の俺に、正面から向き合ってくれたから。
本当に感謝してます」
「....詩みたいな、そんな生徒が学園にいるとわかって、私も救われる思いよ。
聞いたわ。
先生の意志をついでずっと、みんなを守ってくれてたんでしょ?」
「俺なんかまだまだ先生には追いつけない。
でも蜜柑を見てると、すごく先生を思い出すんです」
蜜柑という言葉に、柚香ははっとする。
「絶対、蜜柑と逃げ切ってください。
学園のことはもう、気にしないでください。
俺が守るから、大丈夫」
そんな、初めて見る詩の強い瞳に、少しだけ先生が重なった。
ふっと柚香の顔がゆるんだ。
「ありがとう、詩」
詩は柚香の言葉にそっと頷いた。
よかった。
もう少しで、蜜柑と柚香さんが一緒になれる。
家族と、一緒にいられる。
「柚香さん、そろそろあいつのとこ行ってください」
詩が悪戯っぽく言って示したところには、鳴海がいた。
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