兄妹/奇跡
「....残っても、辛い思いしかしないぞ」
蜜柑らが去ってから、神野が蛍に言った。
「私は...
残されたこのわずかな時間で、兄の今までの苦しみを....少しでも肩代りしたい。
家族にも....長い間ずっと誰にも頼れず、今に至るまで兄が歩いてきた道のりを知る事で
ちゃんと兄との絆を感じたい....
私はそのためにこの学園にやってきたから.....
後悔はありません」
蛍はそう、強く言った。
だけど瞳は濡れていた____
蛍と別れた蜜柑は、テレポート先で泣き崩れた。
涙がとめどなく溢れてくる......
「ごめんみんな....
ウチ泣いてばかりで。
でも....
泣いた分だけ、ウチ....
強くなるから....
....お母さんを、みんなを、
もう二度とこんな思いせんでいいよう....守りたい.....っ」
もう何度もしたこの決意。
こんな時に思い浮かぶのは、詩先輩の姿。
ウチも、詩先輩のようになりたい.....っ
みんなを守れるくらい強く、強く、強く......
「―僕らは〝フリ〟をしないと。
大事なものは大事じゃないフリ。
信じるものを信じていないフリ.....」
「―そうやって、大切なものを守っていこう。
この学園で生き抜いて、いつか本当の事を話せる場所に、
僕らの力で変えていくんだ......」
―ガッ...
―バチッ....
神野の雷によって、昼のように明るくなる。
その中で##NAME1##は、神野のタイミングにあわせ、昴の周囲の結界を緩めていた。
##NAME1##の結界によって、昴の治癒のアリスを封じる事には成功していた。
それでも、結界で吸魂のアリスを封じることはできなかった。
―どうしよう、これじゃあ今井くんを取り戻しても、今井くんの心までは取り戻せない....っ
蛍ちゃんもいるのに....
せめて、蛍ちゃんにだけは会わせてあげたい。
お兄さんとしての、今井くんに.....
どうすれば....どうすれば.....っ
詩、詩なら今井くんを取り戻せるの?
詩だったらどうする?____
ダメだ....
こんな時まで詩を頼ってしまっては。
詩はいつだって自分で自分の道を切り開いてきた。
私も、自分で....
今できることを!
何でもいい。
私が今できることがあるなら、
どうか私に力を.....
お願い...っ
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