兄妹/奇跡
「待って....待って翼先輩」
少し先を行く翼を、蜜柑は呼び止める。
「さっきのこと....ホンマにええの?」
蜜柑は不安そうに言った。
蜜柑が言っているのは、先ほど蜜柑らの前に現れたメガネ先輩ら特力を中心とした反初校長の生徒達のこと。
翼は、美咲を一緒に助けに行こうという誘いを断ったのだった。
それを蜜柑はずっと気がかりで仕方なかった。
「美咲先輩達、助けに行ってあげんでええの?」
そんな蜜柑の問いに対し、翼は真っ直ぐに、何の迷いも無く答えた。
「強いですから。
俺のホレた女は」
そんな言葉から、翼の決意がみてとれた。
本当は、心配でたまらないはずなのに。
また、みんなの中で絶対蜜柑を高等部の鍵穴まで連れて行こうという意識が高まったのだった。
そんな時....
ザザ____
―敵....っ!!
何の前ぶれもなくあらわれた敵に、みんな対応が遅れた。
それでも棗はすぐに、炎で相手との間合いをとった。
それを見て、みんなの緊張感が一気に高まり、みんなで風紀隊に向かっていった。
しかし.....
「おい!
敵の中央....っ」
その殿の声に、みんなはっとする。
そこにいたのは....
「あいつ....今井 昴....っ」
そう、誰かが言った通り、そこには蛍の兄でもある今井昴の姿があった。
こちらを見ても何の反応も見せず、それどころか、やられた敵を治していっていた。
「小泉 月....」
蛍がぽつりと呟いた。
蜜柑も気づく。
これは、小泉月の吸魂のアリスで操られているのだと。
「ウチ、盗りにいってくる...っ」
蜜柑はいてもたってもいられなくなり、みんなの制止を振り切り、敵の中へと飛び込んでいった。
「ずっと家族を忘れたことはなかった」
「兄妹としての時間を、もっと過ごしたかった....」
蜜柑の頭の中には、過去の旅へ行く前に昴が蛍へ言っていた言葉が蘇っていた。
―盗らないと....
しかし、その思いは無念にも打ち砕かれる。
―今井代表のアリスは治癒と表裏一体....
痛みを記憶して還元するアリス.....
蜜柑を、〝痛み〟が襲った。
そして、
「捕らえろ!
佐倉蜜柑がかかったぞ!」
という声。
「蜜柑っ」
棗が向かうが間に合わない。
その時___
―カッ...ゴロゴロゴロ....
辺りがぴかっと光ったかと思うと、その場に風紀隊たちが次々と倒れていった。
「蜜柑ちゃん、大丈夫?」
そう、心配そうに言って蜜柑の肩に手を起き、体を支えてくれたのは......
「##NAME1##先輩...!?
なんでここに.....っ」
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