いびつな絆
ペルソナ....
あなたはまだ、やりなおせる
今まであなたが私を守ってくれたように、今度は私があなたを守るわ.....
私がずっと.....
「のばら!
おい、のばら!
しっかりしろ!」
一通り、風紀隊を片付けたところで、詩は気を失ったのばらに気づいた。
詩の声に、みんなのばらのまわりに集まった。
詩が抱きかかえるようにしてゆすっても、のばらは目を開けない。
「のばらちゃん....」
ルイが心配そうに言う。
「こんなにひどいケガ....
早く病院へ行かないと...!」
詩はそう言いながらも、癒しのアリスを施した。
「詩ちゃん....その力....」
「ああ、昴の石が俺の中に入ってんだ」
詩はなお、アリスを施し続けた。
「待って、詩ちゃん」
「え?」
ルイの言葉に詩は顔をあげる。
「のばらちゃんとペルソナは、責任もってあたしたちが病院へ運ぶから、だから詩ちゃんは、今その力を使わないで....っ」
「何言ってんだよ....」
「詩ちゃんは、人のためにアリスを使いすぎだよ。
たまには自分のためにも使わなきゃ。
......それに、まだいくところがあるんでしょ?」
「え....」
「まだ、人のために力を使わなきゃいけないなら、そっちに行って.....
あたしたちは、もう大丈夫だから」
「ルイ....」
見わたすと、みんな頷いていた。
「のばらちゃんとペルソナにはあたしたちがついてる。
詩ちゃんは、あたしたちにたくさん勇気をくれた。
もう、大丈夫だから」
「そうだよ詩兄。
俺たちはもう十分、詩兄に助けてもらった」
颯も続ける。
「お前ら....」
詩はみんなと目を合わせて微笑んだ。
「ありがとう
.....そう言ってもらえて、俺も救われるよ」
颯は照れくさそうに笑っていた。
詩は立ち上がった。
「じゃあ....のばらを頼む。
それと、ペルソナも......」
詩は、横たわるペルソナに視線をおくる。
―ペルソナ、どうかもう、間違わないでくれ。
のばらの大きな想いと、勇気のある行動を、無駄にしないでくれ。
―あの時、俺はあなたの過ちと先生の最期を見届けた。
幼い俺はあの時、あんたのことが憎くてたまらなかった。
だけどなぜか、あんたを責める気持ちにはなれなくて……
幼かったけど、あんたのこと何も知らなかったけど、確かにあの時、一番辛くて悲しかったのはあんただったってこと、俺は知っている。
俺たちはわかる。
あなたの苦しみも辛さも。
だからもう、一人にならないで......
あんたのことが、死ぬほど憎い。
だけど、あんたも俺の仲間で家族だから、守るよ。
.....ペルソナ。
先生に教えてもらった事、俺と同じくらいたくさんあったと思う。
どうかそれを思い出して.....
きっとそれが、光へ導いてくれる。
俺が、そうだったように_____
「詩ちゃん。
詩ちゃんが来てくれて、本当に嬉しかった」
ルイが言った。
「おう」
そう短く答えると、
「も~う詩ちゃんだいすきぃーーっっ」
何の前触れも無く、さっきの真剣な表情をころりと変えたルイが抱きついてきた。
「お、おい....」
戸惑いながらも、いつもは振り払うそれを今日だけは許した。
詩の顔は、穏やかだった。
「あ、ズルイぞカマ!
俺もーっ!」
同じく颯もじゃれるように詩にくっつく。
それを詩は、笑いながら受け入れていた。
―やっぱ、仲間っていい....
家族って、あったかい.....
自分の前でいつものように繰り広げられるルイと颯の言い合いも、なんだか心地がよかった。
「カマって言ったなガキーっ」
「うっせーよカーマ!」
そんな言い合いの間を縫って、八雲の声が聞こえた。
「詩....無事で」
そう、ぎこちなく手を出してきた。
詩はその手をとって、固く握手した。
「ああ、もちろん。
ことが済んだらまた会おう。
お互い、無事な姿で.....」
そんな風に、不器用な彼に微笑みかけた。
そうしたら、不器用な笑顔がかえってきた。
「にーたん、」
今度は陽一の呼びかけに答える。
「おーう、陽一。
お前もよくがんばったな。
今度遊ぼうなぁー」
詩はいつものように、わしゃわしゃと頭をなでた。
陽一は、こくりと頷いた。
「じゃ、俺行くわ」
穏やかな時間は思ったより短くして、終わった。
みんな不安になる。
詩がもう、戻ってこないんじゃないかって。
でも、なぜか向けられる笑顔には、どんな不安でも吹き飛ばしてしまうような不思議な力があって.....
みんなつられて、笑顔になった。
詩は、そんな温かいものを残し、1人テレポートで姿を消した。
「詩ちゃん、絶対無事でいてよね.....」
ルイの空しい声が小さく響いた。
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