いびつな絆
「ねぇ、詩。
本当のこと、言って.......」
##NAME1##が、静かに言った。
「最近ずっと、病院通ってるの........
知ってるよ。
さっきから辛そうなのも、アリスを使ったからで........
.......詩、
詩のアリスって.......
もしそうだとしたら、私は詩をとめなければならない」
##NAME1##の悲しそうな瞳が揺れた。
「俺は、死なない」
詩は、あの初めて会ったときのような強い目をしていた。
その瞳を前にしたら、何も言えなくなってしまう。
詩はずるいよ...
「##NAME1##が心配してくれてるのは伝わる。
死が近くにあることで、怯えさせてしまってるのもわかる。
でも、そんな心配も吹き飛ばしてみせるから。
こんな決意半ばに、やり遂げずに死ねるかよ」
強く強く、自分に言い聞かせるかのように詩は言った。
「どこにも行かないでって言えたら...
どんなに楽か。
でも、そんなのきいてくれる相手じゃないってわかってる」
そう、私の好きになった人はそういう人。
わがままかもしれない。
でも、失うのは怖くて怖くて.....
詩を困らせたくないのに、涙はとまることを知らない。
「ごめん、##NAME1##....」
詩は私の顔を手で包み込み、涙を拭った。
「あいつらも俺の家族なんだ。
アリスとして生まれたことを憎み、呪い....
だけどその苦しみを分かち合うことができた仲間なんだ。
だからこそ、手を取り合わないといけない。
誰も、闇に堕ちないように.....」
誰も見捨てない。
ひとりたりとも、置いていかない。
そんなあなたを、私は好きになったんだ。
そんな詩がたまらなく愛しくて、だからこそ不安で、切なくて.......
複雑な感情が入り乱れた。
そんな時だった。
一瞬にして、なんの前触れもなく唇をふさがれた。
本当に、突然だった。
詩が、##NAME1##の言葉を遮るように、その唇に自分の唇を重ねて塞いだ。
一瞬、頭が真っ白になって、何が起きたかわからなかった。
わけがわからなくて少し抵抗したら、詩は余計に激しくせまってきて......
こんな詩、初めてだった。
こんなに激しく、すがるように欲している詩......
まるで、詩の思いが一気に流れ込んでくるようだった。
今までの苦しみも、辛さも、葛藤も、背負ってきたものも、今まで表にあらわさなかった、すべての気持ちが......
それを感じて、一層涙が溢れた。
やっと、本当の詩に会えた.....
それが涙が出るほど嬉しくて、でも切なくて.....
ずっと1人でこんな感情を抱えてきた、そんな詩を想うと、涙がとまらなかった。
それは嬉し涙と入り混じった。
気がつけば、詩に身をまかせていた。
私は、詩のどんな気持ちや思いも全部受けようと、詩にしがみついて、必死に詩の行為にこたえた。
そうでもしないと、詩が本当にどこかに行ってしまいそうで.........
受け止めたい。
詩のすべてを。
悲しみも苦しみも全部。
だから笑顔を向けた。
「詩、大好きよ。
無事だと、信じてる」
詩が今までどんな気持ちで笑ってきたのかわかるから。
こういう時こそ、詩は笑うんだ。
「ああ、あたり前だ」
詩も、いつもの笑顔を向けていた。
久しぶりの##NAME1##の笑顔に、また心臓がどきっとする。
それを悟られる前に、また愛しい人の唇を塞いだ。
顔が赤くなって、すぐに余裕がなくなる君が、たまらなく愛しい。
月が見守っている。
月に誓って、約束は守る。
君が好きだ。
君をもう悲しませたりしない。
あんな顔に絶対させない。
君の傍からいないくならない。
ずっと、君の傍で笑っていられるように。
君を笑顔にできるように。
君の笑顔を俺が奪うなんてことは、絶対にしない。
ペルソナはのばらと対峙して、また思い出す。
なぜ、こんな力をもってしまったのだろう....
制御しなきゃいけない力をもってしまった事に、何の意味が.....?
「そのアリスで人の嫌がることを引き受けることで、世の中をよくするんだ」
「君の力は一見悪に見えて、正義の名の下に必要な力......
間違った道へ行く者を正す力があるんだ」
「君の苦しみには大きな価値がある。
苦しみ抜いた君にしかできない役割をこなすため......」
一生、自分に向けられることのない〝愛〟を理解することに、
何の意味が.....?
ペルソナはそう、いつでも問うていた。
自分に向けられるあの瞳に.......
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