いびつな絆
「のばらちゃん。
あれ?まーた泣いてるの?」
「....女の子のお友達がほしい
でも...みんな、のばらのアリスがこわいって.....」
「こわいっつーか、
お前きもいんだよ
じめじめうじうじもじゃもじゃ....」
―ガッ
「ぅぐ...ったー!」
悲痛な声をあげる颯。
涙目で自分を殴った相手を見て、少し驚く。
「う、詩兄...っいつのまに!?」
「ったく、あんまりのばらをいじめんなよ?」
「別に事実を言っただけ...」
―ガッ
本日2度目の制裁のあと、お決まりのうめき声が聞こえた。
「クラスではのばらちゃん1人ぼっちかもしんないけど、
あたしたちがいるじゃない」
「そーだぜ
俺たちは仲間で友達で家族なんだから」
詩はのばらに向けて笑顔で言った。
「ルイさん...詩先輩.....」
「女友達ならあたしがなってあげるわよ~
なんならお姉さん役だってね!
じゃあ詩ちゃんはお母さんかなっ」
「なんでそーなる...」
「...だから1人じゃないんだよ、のばらちゃんは」
つっこんでいる詩を無視して、ルイは優しく、のばらに言った。
「ここにいる奴らみんな、こんな境遇だけど、それを分かり合える仲間はここにしかいないんだから
みんなで助け合ってやっていこーぜ
そのためにも、笑わないと!
くよくよしてたって、何も始まんない!」
わしゃわしゃっと、詩はのばらの頭を撫でた。
「そうそう!
泣き顔には不幸が寄ってくるよ!」
ルイも頷いて、続けた。
「あたしたちだって、他の奴らと同じ人間なんだから
幸も不幸の量も平等!
今までクソだった分、人生巻き返しはこれからっしょー!!」
「あ~もう、みんな辛気臭い!
笑えよ~!」
「出動だ。
のばらと棗をはじめ、
全員に制裁と捕縛を....
それが終わったら、
詩の捕縛にもとりかかる」
「あーぁ....やんなっちゃうなー...っ
あたしたち、
何でこんなことになっちゃったんだろうね....」
ルイは、悲しげに、そして苦しそうに言う。
それを横で八雲が見つめていた。
表情には出さないけれど、彼も心情はきっと同じ。
―いびつで、だけど強い絆.....
それは同じ闇を抱えた者同士にしか知りえない、心の底にある支え。
知らぬ間に、それはずっとずっと固く結びついていた.....
「ルイ、八雲....みんな....
大丈夫かな...
仲間同士でなんて、絶対やりあっちゃいけない......」
##NAME1##のいる横で、詩はふいにぽつりと、そう呟いた。
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