式神使いの闇
「相変わらず立場がわかっていないようだな。
失望したよ。
こちらが優位に立っていると見てわからないほど愚か者だったか。
それほどの場数は踏んできていると思ったが、所詮操り人形のお前はその程度ということか」
めがねの奥の瞳は、冷たかった。
「なっ!
てめー言わせておけば!
詩がどんな思いで任務を引き受けてると思って!」
翼が前にのめりだすように言う。
「翼...っ」
詩は小さくつぶやいた。
「...お前をかばうやつがいるとはな」
東堂は興味深そうに言った。
「当たり前だろ!
詩は仲間だ!」
そんな翼の反論は逆効果だった。
「詩、ここにいる全員がお前の仲間だとして、お前がやっている任務内容、すべて知っているのかな」
詩の肩がびくりと、わずかに震えた。
東堂はその細かな反応を見逃さなかった。
「言ってやろうか?
お前が〝守るため〟と言ってやってきたその行動。
どんなものか、ここにいるみんなに知る権利があるだろう?
ここにいるのは共に戦う“仲間”なんだから。
だがどうだ?
お前のやっていることをここにいる全員が知ってもなお、お前の守る仲間たちは今までどおりに接してくれるのか....
今、試してみてもいいんだぞ」
詩は拳を握り締める。
「今、そんなこと話してる時間はない」
搾り出すように詩は言った。
東堂は余裕の表情で続ける。
「それもそうだ。
多かれ少なかれ、今ここで見せつけることになるのだからな。
ここで私達をとめるには、生ぬるい攻撃は逆効果。
見たところ、お前の仲間に場数をふんだ手練れはいなさそうだ」
東堂は値踏みするように、皆を見つめる。
「お前ひとりでこの人数を守りながら戦うには、覚悟がなくてはいけない。
人を殺す...覚悟がな」
その言葉で、全員に緊張が走った。
今、なんて....?
「本気でやらないと、お前の守りたい者は......どうなるか.....
こんな事件を起こしておいて.....もし万が一、こちらのコントロールミスで弾が流れても、文句は言えまい。
この場合、事故いや....
制圧という言葉が妥当だろうな」
「てめぇ東堂....
こいつらには指一本触れさせねえ」
「くっくっく.....
そう感情的にならないでくださいよ。
取引きが台無しだ」
悔しいが、今このフィールドをしきっているのは東堂だ。
不本意でも多少は相手のペースに乗らなくてはならない。
「取引き.....?」
「そう、取引きです。
こちらの出す条件を飲んでくれれば、誰も傷つくことなく、私達はここを撤退しましょう」
東堂はにやりと笑った。
詩率いるこちらは終始、緊張した空気がぴりぴりと流れていた。
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