アリス石に込めるもの
「―アリスってのは大体が自分の意思に従って使うもんだけど、
アリスストーンは誰かがそれの恩恵を受けるために、自分の力を石にして出すもので
要するに普通にアリスを使うより、アリスストーンを作るには何より作り手の心が大きく影響する」
殿は意外とまじめに説明する。
「心…」
蜜柑はつぶやく。
「石を使う人間、もしくは石をもらってほしい人間への思いだよ
.....そうだな、誰かへの思いやり。
まず自分の力で少しでも相手を守りたい、役に立ってほしい、とか。
何かしらの強い思いがないと、石は産まれないと思ったらいい」
―使う相手を思いやる気持ち.......
「さっき言ってたお前の拾った石、あれがいい例だな。
だからアリスストーンは、能力の個性の他に作った人間の性格やその時の気持ちが色によく現れる。
ま、無効化はもともと相手能力者あってのアリス。
その辺はお前もう、得意だろ?」
―アリスストーンは誰かへの強い思いから作り出される……
「よーしレクチャーはこれで終わり!」
こうして、蜜柑のアリスストーン作りが始まった。
果たしてうまく作れるのだろうか………
一方の棗は、窓辺で漫画を読み、暇をしていた。
しかし聞こえてきた殿のアリスストーンの説明が終わると、ふとポケットに手を入れる。
中には濃い、藍色の石。
それを静かに握り締めるのだった。
そして、いつのまにかまた皆に囲まれている詩を見つめる。
皆の中心にいる詩は、いつものように笑っていた。
花姫殿の地下で会った詩とは別人のように見えた______
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