アリス石に込めるもの
そんなこんなで始まったアリスストーン作り実習。
なぜ詩が来たかというと、危力系教師の代理という名目の気まぐれ。
鳴海の家に行ったとき、成り行きでそうなったのだ。
しかし、棗にストーン作りに関して教える事は何もない。
そうなるともう、詩のまわりは初等部生が集まっていた。
蜜柑は改めて、詩の人気を実感するのだった。
「殿先輩みてみてこの石」
蜜柑はというと、特力の先輩に最近拾った石を聞いていた。
当分、詩のまわりには近づけなさそうなので、詩先輩と話すのは後回し。
拾っては落し物として届けるのだけれど、なぜかまた蜜柑のそばにおちている、という不思議な石。
「アクアマリンの石......」
殿が呟きながら石を観察する。
殿は軽く石について説明する。
そこへ......
「アクアマリンは、思いやりとか他人への愛情に関係することが多い色」
説明に加わったのは、詩。
「わっ詩先輩、いつのまにっ」
蜜柑は驚きの表情を見せる。
「よっ」
と手をふり近くの椅子に腰掛ける。
「おい詩、お前さっき集まってたコたちに教えなくていいのかよ?」
殿は呆れ気味に言う。
「ん。大丈夫。
俺、危力系代表だし。
それぞれの能力別のセンセー達に任せた」
ニカっと笑いながら言う。
「おい詩、お前じゃあ何しにきた?
棗は自習だし」
核心をつく殿。
「んーまあ、暇つぶし。
蜜柑たちにもしばらく会ってなかったしな」
その一言で、真の意図がわかった殿。
もう咎めることはなかった。
「―ところで詩、お前この石の持ち主知らねーか?」
いろんなやつと知り合いだろ?
まさかお前?
と殿が尋ねる。
「なワケねーだろ。
俺はそんなまわりくどい渡し方しねーよ。
それに俺の石は濃い藍色。
言っとくけど、殿のあの趣味の悪いなすび色とは違うからな」
「はっテメ、失礼だな!
んで、どーなんだ?」
「んー……知らないな」
そうは言ったものの、これは何か知ってるなと、殿は勘付くが、詩が言わないのはそれなりのワケがあるのだろうと、聞かないでおく。
「まあ何にしろ、ラッキーなんじゃねーの?この石拾って。
大事にもっとけよ」
殿は蜜柑の頭をポンっとなでる。
―思いやり.....?
一体誰が?
そう思ってたのは蜜柑だけでなく、こっそり会話を聞いていた棗と流架も同じだった。
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