覚悟/理由
「つかさーナル、その手どうしたんだよ。
最近様子がおかしいよ」
次は詩が話題をふる番。
いきなり核心をつかれ鳴海はたじろぐ。
「なんのこと?」
明らかに動揺してるのがわかる。
「見せてみろよ」
詩はソファから起き上がり、鳴海のほうへいく。
「バレてたか」
鳴海は溜息をつく。
「当たり前。会うといつも手袋してる。
オマケに今日で確信がもてた。
家の中でも手袋なんておかしいだろ。
いくらなんでも」
そう言って、手を見せるように催促する。
鳴海は渋りながらも手袋をとった。
―っ!!
「これって……ペルソナの?!」
「うん、そうだよ。
裏切りの代償、僕も高くついちゃったよ」
ハハっと笑うが、詩は笑えない。
険しい表情だ。
今見えている部分でこんな状態なんだから、これは腕にまで広がっているはず。
そして、じきにそれは心臓へ届く。
そうなればもう、助からない。
「いつだよ?」
相変わらずの険しい口調で詩は問う。
「……クリスマスパーティーの時」
―っっ!
あの時の、嫌な感じ。
やっぱりあれは.....
「俺も見かけた、ペルソナと初校長」
詩は呟く。
「そっか」
「俺やっぱ見てみぬフリなんかできない。
今すぐにでも蜜柑に」
「ダメだ!」
鳴海が怒鳴るように言う。
「蜜柑ちゃんだけはダメだ。
僕が守らなきゃならない」
鳴海の久しぶりにみる強い瞳。
―殿と同じ目だ……
「でも…」
「僕は大丈夫だから。
詩もいつも言ってるじゃん」
「そうだけどそれとこれとは……」
「何が違う?
詩だって花姫殿で死にかけた。
今もこのまま任務を続ければ....
そうでなくてもアリスを使い続ければ、
...それくらい、自分が一番わかってるはずでしょ?
僕も詩と同じ。
詩にだけはやり方にとやかく言われたくない」
あまりに真っ直ぐな目に、詩は黙らざるをえなかった。
鳴海もまた、詩と同じくらいの強い意志をもって、蜜柑を守ろうとしていた。
先生と、柚香さんの娘である蜜柑に特別な情が沸くのは詩もおなじだからわかる。
それが鳴海の立場なら......
わかるからこそ、その決意を邪魔することは詩にはできなかった。
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