覚悟/理由
「―ちょっと気になることがあるんだけど、」
ふいに鳴海が話題を変える。
「ん?気になることってー?」
いつのまにかソファに寝転がりくつろいでる詩。
「殿内君のこと」
「え?」
詩は静かに目線をナルに向ける。
「あのコ、いろいろかぎまわってるよ。
僕のとこにも何回か来たしね」
「……やっぱりか―」
詩は表情を曇らせる。
「そろそろ、ヤバイんじゃない?
今回の花姫殿のことに関わってる事なんて、初校長に報告いってるでしょ」
鳴海は、これ以上かかわると殿も目をつけられることを危惧しているのだろう。
「うん……かといって俺がなんか言っても、余計に煽る気がするしなー...
でもま、アイツのことは大丈夫だよ」
詩は天井を見つめながら言う。
「へぇー…詩がそんなこと言うなんて珍しいね。
なんか行動おこすこと承知で話したのに」
ハハっと笑う詩。
「まーな、前の俺ならなにかしら行動してたかもな。
でも、今回のことで殿のこと改めてすげーなって思って。
そんな言い方もあれだけど」
「なんかあったの?」
鳴海が興味でもあるかのように、詩のほうを向く。
「いや、俺が気づくの遅すぎただけなんだけど、
Zを追って蜜柑たちが外に行ったときとか、
今回の花姫殿のことだってさ、
すっげー頼りになったんだ。
それに、すげー心配させちゃった」
―そんなボロボロな体になってまでムチャしてんじゃねーよ!
詩は、花姫殿の地下から出てきたときのことを、思い出す。
あんなふうに強く殿に言われたのは初めてだった。
あんなに強い瞳も。
「俺がなんか言ったら、また怒られちまうな」
詩はハハッといつものように笑った。
その姿をナルは、穏やかに見つめるのだった_____
―殿と出逢ったのは、中等部の頃。
最初こそ、殿は詩をよく思っていなかったけど、理解しあってからはいつも一緒にいた。
バカやって、怒られて...
笑いあって、たまには真剣な話をして...
そして、俺らはあの時より、確実に成長している。
一緒に過ごした時間分、信頼してくれている殿を、自分も友達として信頼しなければならない_____
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