代償
ある日....
「なあ!俺いいモン見つけちゃった」
「なんだよ、ソレ?」
「聞いて驚くなよー?これは、詩の式神だ」
「は?それが何だってんだよ」
「なっ…お前知らねーの?」
「だから何のことだよ?」
「あいつ、花姫殿に立ち入り禁止ってのは知ってるだろ?」
「ああ」
「聞いたところによれば、少し足を踏み入れただけで罰則らしい」
「ふーん、それで?」
「この式神とやらを、こっそり花姫殿に忍ばせて、じんじんにでも知らせるんだよ」
「………それ、いいな」
少年2人はニヤリと微笑んだ。
そんな些細なことがキッカケで、詩は度々罰則を受けた。
誰もが窮屈な思いや多少なりとも不満を抱えながら送っている学園生活。
そこで少しでも目立ったり嫉妬されるようなことがあったりすれば、簡単に標的になった。
初等部のころはお世辞にも好かれているとは言えない態度だった。
気に入らないことがあれば、アリスや暴力で人を傷つけたこともある。
それを変えたのが“先生”だった。
先生と出会い、仲間を思いやる気持ちを持ってからは、誰一人として傷つけたことはない。
しかし、初等部のころの詩の行動を根にもってる人は中等部になってもいた。
そんな詩のことを面白く思わない人が〝中等部花姫殿と詩が関わると詩が罰則を受ける〟というウワサを聞きつけて、悪意のある悪戯を始めたのだった____
詩は中等部にあがり、任務の量が急に増え、多忙な毎日を送っていた。
彼女と別れることになったのも、ちょうどこのころ。
また、忙しさで学園中に詩の気まぐれで撒き散らしていた式神の管理がしっかりできていなかった。
その式神を詩を好いていない者が見つけて捕まえ、花姫殿に忍ばせ適当な教師にチクっていた。
勿論その後詩は罰則。
任務から帰ってきては罰則。
帰ってきては罰則の毎日だった。
それでも詩は、悪戯した人を咎めたり仕返ししたりなどはしなかった。
先生がくれた笑顔を、忘れることなくどんなことがあっても笑っていた。
そんな詩のまわりには、いつからか自然と人が集まるようになっていった。
どんなに傷だらけで教室にきても、明るく気丈に振舞い、皆をも笑顔にし、場を盛り上げた。
しだいに詩は皆と打ち解け、悪戯も徐々に減り、気が付くと誰もそんなことをしなくなった。
高等部にあがるころには、その性格と笑顔で誰からでも好かれ、人気者として有名になった。
それは、学園で彼の名を知らない人はいない、と言われるくらいだった____
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