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アリス紛失事件/特力の教室



何やな―― 棗――…

あいつ最近、ウチの事絶対避けてる気がする.......

ウチ何かしたか――?






最近、なぜか棗に冷たくあしらわれていた蜜柑。

それに加えてアリス紛失事件。

蜜柑の心はモヤモヤ真っ只中。

そんな心を抱えたまま、特力の教室の扉を開けるのだった。

開けた途端、廊下にもれる話し声。

声からして、2人ほど。

聞いた事ない声やけど、誰やろか?






そう思っていると、後ろのほうからも話し声が聞こえてきた。

「あ、翼先輩、美咲先輩、メガネ先輩.....っ」

楽しそうに話しながらこちらにくる3人は、扉に手をかける蜜柑に気づく。

「おぅ、蜜柑!」

翼が片手をあげる。

「どーした蜜柑、入らないのかー?」

美咲が不思議そうに言う。

「なんか、話し声が聞こえてん」

3人は顔を見合わせてから、翼を先頭に中へ入る。

その途端、もわっとした空気が皆を包む。

「うわっ何だこの部屋、空気わりーっ」

入ってすぐに翼が言う。

どうやら煙草の煙らしい。

と。

「おー翼ー」

話し声の主の2人が会話を中断し、こちらを見る。

「.....詩!」

翼の顔が驚きの表情へと変わる。

それは美咲もメガネ先輩も同じだった。

翼たちの視線の先には、ミルクティー色の髪の高等部生。

「おい翼、俺もいるぞー」

そう言ったのは、煙草を片手にヒラヒラと手をふる高等部生。

「げっ殿」

こちらには、あからさまに嫌な顔をする。

美咲もメガネ先輩も同じ反応。

蜜柑はというと、ひとりポカンと口を開けている。






「そういやお前には何も言ってなかったなー蜜柑」

蜜柑の様子を見て、翼が言う。

「こいつは殿内明良。特力の代表だよ、これでも...」

煙草を吸っているほうを示す翼。

「よろしくなーチビちゃん」

へらりと慣れたような笑みを浮かべ、未成年なのにたばこを吸っている姿もあいまって、なんだか“オトナ”な雰囲気を感じた、その高等部生。

この人が、特力の...代表...




「んで、こっちは東雲詩。蜜柑も少しは知ってんじゃねーか?有名だし」

翼は隣の先輩を示した。

「よろしく、俺は危力の代表だよ」

やわらかい声だった。

彼の前髪は目が隠れるほど長く、その表情は読み取りづらいが、やさしく微笑んでいるのは雰囲気からわかる。

こちらは特力の代表として紹介された彼とは打って変わって、少年のような親しみやすさを感じた。







―と....特力の代表.....っ!?


それに危力系の代表......っ!?





当たり前のようにそこにいる2人。

こんなにも自然に幹部生の2人に会っていることに、蜜柑は驚きを隠せない。

それに、同じ幹部性の櫻野や昴とは全然雰囲気が違う......





詩のことは、この学園でふつうに過ごすだけでもよく耳にしていた。

皆が言ったとおりの美形で、独特な雰囲気を持っているけれど、決して近寄りがたいわけではない。

そして、初めて会う特力の代表。

笑みを絶やさない彼を、いい人そう、と解釈するピュアな蜜柑が、みんなを心配させた。

「お前の将来が不安で仕方ないよオトウサンはぁ」と言って、なぜか近づくなと念を押して言ってくる翼の言葉を、

蜜柑はちゃんと理解できないでいるのだった。








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