起死回生の一手
―キュッ...
ザ――――――ッ
蛇口をひねると勢いよく飛び出す、湯。
それを全身に浴びながら、乾いてこびりついた血を洗い流す。
鏡に映る自分。
こんな時だけど、改めて大人になったなと思う。
濡れた長い髪をかきあげ、久しぶりに自分の顔を見た気がした。
―汚れた自分の手と、アリス...
何度も、あの殺戮の場がよみがえる______
熱いシャワーを浴び続けた。
あの任務のことを忘れようと、肌をごしごしこすった。
でも、シャワーと一緒に記憶までは洗い流せない。
あの感覚と情景は鮮明によみがえり、消えることはない。
自分の選んだこととはいえ、すべてを投げ出したくなる時だって、詩にもある。
それでも今回のことでさらに、学園を変えたいと思った。
変えなければならないと思った。
この学園、初校長の私利私欲に、今まで何人傷つけられてきたか....
暴走した式神で、棗の過去を思いがけず知ってしまった。
今はもうアリスではない妹の葵だけでも自由になってほしいという思いは詩も同じ。
いつか、棗も家族と安心して過ごしてほしい。
そのための一歩が、どうか、うまくいきますように_____
気を抜くとどっと疲れが襲ってきた。
秀一たちのもとへ戻ると、すぐにソファへ体を投げだした。
髪からは水滴が落ちるが、そんなの気にせず、詩は目を瞑った。
秀一はそっと毛布をかけてやる。
本人よりも、その体調を心配していた。
そうして詩が眠りに落ちてからしばらくしてのことだった。
蜜柑の第2のアリスが発動したのは......
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