起死回生の一手
「....話をまとめるとお前ら、
中等部校長のサロンを抜け出して禁域の地下でバトルをおこし、
ペルソナ軍団を敵にまわし、棗の妹葵ちゃんを連れ出し、そこになぜか立ち入り禁止の詩まで参戦、結果蜜柑は重体.....ってことか?」
言っていることは間違っていないので、うつむく皆を代表し、一応詩がこくりと頷く。
「〝こくり〟じゃね――――――っ!!!!
このクソガキ共が何さらしとんじゃコラ―――――っっ!!!
んな事に俺をまきこむんじゃねーっ
大体お前らガキのくせしてヤバイ山ばっか踏みやがって何だ!?
お前ら疫病神か!?」
「まあまあ、落ち着けって殿ー」
皆が殿と目を合わせようとしない中、殿をなだめる詩。
「落ち着いてられっかこら――――っ!!てゆうか一番お前が言うな!!
お前はさらに別な問題もあること忘れんじゃねーぞ!」
ことの重大さをやっと知らされ理解した殿が怒るのは不思議じゃない。
「忘れてないよ。
でもそれは俺だけの問題。
今はこのこたちのこと考えないと」
さらりと言う詩。
「お前なー....」
こんな時まで冷静でいられる詩を、殿は呆れるのだった。
「....またとんでもないことをしてくれたもんだ」
ここにも呆れてる人が数名。
秀一と昴プラス今さっき状況を聞かされた美咲。
「ペルソナといえば初等部校長の直接息のかかった秘密私兵のようなものだ。
こんな事をして、関わった人間はタダではすまない。
今まで.....初等部校長に目をつけられた人間がどうなったか」
秀一は溜息を吐き出すように言ってちらりと詩に目線をやる。
詩は長い前髪の奥で、申し訳なさそうな目をしていた。
「....こいつらは全員まきこまれただけだ。
責任は全部俺にある。」
今まで口を閉ざしていた棗が、すっと前に出る。
「これ以上、誰にもとばっちりがいかないようにするためにも、
_____俺は葵を連れて学園を出る」
「お兄ちゃん......っ」
「棗....っ」
「お前何言って....」
皆、目を見開く。
「....こんな形で葵を連れ去った以上、どっちみちもう学園にはいられない」
そう、静かに棗が言ったとき、
「な...つめ....」
「蜜柑....っ」
昴のアリスで少し回復したのか起き上がる蜜柑。
「どこ...いくの?
学園から...ウチらのもとから、どっかいってしまうの.....?」
―みんなのもとから、棗がいーひんくなるの?
蜜柑は傷ついたようなショックを受けた顔をする。
―バシッ
鈍い音が部屋に響いた。
「っ!....詩、てめえ何すんだ」
詩が棗の後頭部を加減もせずに叩いたのだ。
「お前はバカか!?
今ので少しは目ぇ覚めたか!?
そんなボロボロの体で目の見えない妹をつれて、学園を出るだと?
んなの無理に決まってんだろ!
それが成功してもいずれ連れ戻されて今よりもっとつらい立場になる。
それに、今お前が出てってもなー俺はともかくお前の言葉信じて蜜柑たちを許すほど初校長が甘くないの、知ってるだろ?」
詩に図星をつかれ、棗は目を逸らす。
しかし、それ以外にどうすればいいというのか。
詩だって、棗の気持ちはわかって言っている。
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