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起死回生の一手



「―新年早々....深夜にボロゾーキンのようなナリでよくも、これだけいわくありげな連中がそろいもそろってここにしのび込めたもんだ」

「―感服するよ、詩」





「ははっ.....まあ、俺にかかればここに忍び込むことくらい朝飯前だよ」

誰も褒めていないのにいつものように調子よく応える詩だが、殿の肩をかりて立っている姿はいつもと違い痛々しい。

笑顔をつくろうとする詩とは反対に、秀一と昴の表情はどんどん険しくなっていく。






乾いた血がついたままの詩。

棗のかたわらにいる謎の少女(妹)。

ひどいケガの蜜柑。

そして極めつけは、〝今井昴丸秘ファイルその1〟という何とも怪しげな、詩としては少し興味のわくファイルを片手にもった蛍。





「何のマネだ、ボロゾーキンS....」




最初に口を開いたのは昴だった。

メガネの奥の目が怖い。

昴と蛍の間には早くも火花が散っていた。






しかし意外にも、その一触即発の空気はすぐなくなった。





「あなたが.....ペルソナのアリスから、唯一生還した人間だってことを聞いて、ここにきました」

珍しく弱気で、今にも泣き出しそうな表情の蛍。





「...おねがいです。

蜜柑を助けて下さい。

今後もう決して.....ご迷惑をかけませんから。

今回だけ、私達に力をかしてください。

おねがいです....」





こんな弱弱しい蛍は、誰も見た事がなかった。

一方の昴と秀一は、幼き日のことを思い出す。

そして、あのアリスで亡くなった〝先生〟のことも。





「....殿内、増幅のアリスを発動させろ」

昴は、意を決したように言う。

「おい、殿!」

バンっと、ボーっとしている殿の背中を叩く詩。

「あ...ああ!」

殿はあまりに簡単に昴が動いたことに拍子抜けしているようだった。

そんな中昴は、蜜柑の手当てを始めた。




昴が静かに口を開く。

「....誤解しないでもらいたい。

僕はあの男のアリスから逃れる方法を知り得てるわけでは決してない。

過剰な期待をされても困る。

今は君達が、この後病院に向かうまでの応急処置を施してるにすぎない」





「.....とりあえずその間、迷惑の代償として、君達にはこの子が何故こうなってしまったかの経緯を、包み隠さず僕らに話してもらう必要がありそうだ」

秀一が続けて、静かな目で言った。







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