起死回生の一手
「―詩!?.....何でここに......蜜柑の、そのケガは.....!?」
目の前には、目を見開く殿。
驚いたことに、地下を出ると裏口には殿と美咲がいた。
どうやらのばらが翼と美咲に助けを求め、その後美咲が殿に助けを求めたらしい。
「詩...お前何して...」
殿は詩の姿に目を見開く。
明らかに任務のあとのような風貌。
そして何よりも、この花姫殿は詩にとって厳しく立ち入りを禁止されている場所。
「俺のことよりも蜜柑のほうを頼む!
ペルソナのアリスを受けたんだ!」
いつになく必死な詩に緊急を要することだと察する。
「蜜柑っ....」
蜜柑にかけより、その禍々しいけがの様子にさらに驚いた。
一体花姫殿で、何があったんだ...?
―ざざっ.....
「おっおい詩!」
詩がいきなりバランスを崩し、慌てて翼が支える。
「わりー、ちょっとフラついただけだ」
殿も、詩の様子で限界が近いことをわかっていた。
「フラついたじゃねぇ!そんなボロボロな体になってまで無茶してんじゃねーよ!
.....美咲ちゃん、病院に連絡して。
このバカと蜜柑のために」
「あっ...うん」
美咲は、蜜柑の姿にショックを受けながらも返事する。
殿は珍しく怒り気味に言い、蜜柑は他のみんなに任せて詩の腕を自分の肩にまわし支えなおす。
殿が怒っている理由はわかりきっている。
詩自身、殿の一喝で冷静になった今、今回ばかりはやりすぎたということは自覚している。
それでも動いてしまう自分の性は、もはや誰にもとめられない。
心配してくれている殿におとなしく従おうとしたが、ここであることを思い出した。
「美咲、病院への連絡は待ってくれ」
「何言ってんだ、お前も蜜柑も今は治療が優先だろ」
殿はいい加減にしろとも言わんばかりだ。
そんな殿の言葉をさえぎる。
「蛍ちゃん、だっけ。あんたの兄....昴なら何かわかるかもしれない」
みんなの視線が詩に集中した。
詩は思い出した記憶をたどっている様子。
「どいういうことだ?」
みんなの代わりに、殿が問う。
「昴は、初等部のときに〝中等部の地下に住む化け物〟に殺されかけたんだ。
俺もあんときはガキだったから、その化け物が何なのかわかんなかったんだけど、あれはきっとペルソナ.....」
先ほど花姫殿の地下でみた記憶とつなぎ合わせれば納得がいく話だ。
皆が息を呑んだ。
その中で蛍は、1人小さく決心する。
「昴が、ペルソナのアリスから唯一逃れた人間だとしたら........」
そう言って詩は、蛍をまっすぐ見つめた。
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