禁域/暴走
詩は、暗闇の中を走っていた。
体は辛いが、もうそんなの気にしてる暇もない。
ルイの気持ちも十分伝わっている。
それでも、自分にできることがあるのに傍観することだけはできない。
後悔はしないと決めたから_____
とうとう、棗のいる場所へついた。
数人の気配がする。
―みんな、ここか.....
詩は、最後の曲がり角を曲がった。
「―ペルソナ」
その声に、そこにいた皆が反応する。
「...っ」
「詩」
「詩せんぱ..」
「詩...なぜここに...っ」
八雲が驚きの表情で言う。
他にも皆、驚いている様子。
ペルソナは目を細める。
そのペルソナの前に座り込んでいるのは、ペルソナのアリスを受けた、蜜柑。
「ペルソナ、なんでこんなことを!」
蜜柑の姿をみて、一段と感情が高ぶる。
先生へ向けたアリスを、蜜柑にまで....。
詩は、式神を撒き散らしながら、前を進む。
「それはこちらの質問だ。
なぜ、こんなところにいる?
お前の能力はここでは危険だ。
早くここから出なさい。
それとも、ここにわざわざ懲罰を受けるためにきたのか?」
ペルソナの冷たい口調。
「俺には守りたいものがある。
どこにいようと、俺は誰のことも見捨てない」
棗は、その言葉に唇を噛み締めた。
ペルソナは、かつての人とその姿が重なるがその感情を押し殺した。
「...守りたいもの、か。
それをどこまで守れるか、見ものだな」
そう言ったペルソナは、アリスを使う体制に入る。
「ペルソナ....っ 詩にそのアリスを?!」
八雲が驚き言う。
「当たり前だ。
詩がここに来た時点で、即罰則。
それは学園と詩との間で決められたこと。
自分の立場を知らなかったなどとは言わせない。
みてわかるだろう。詩自身、自分のアリスを制御できていない。
アリスが暴走したとき、誰もとめられないほど、詩のアリスは危険なんだ。
ここにいる者全員、無事では済まされない。
.....八雲、援護をするんだ」
「....なっ」
そんな2人の会話をさえぎる詩。
「ペルソナ....そのアリスを蜜柑に使ったのか」
「能力にうぬぼれて、仮面を外した私に触れたのが運のつきだ」
「....絶対....許さない.....」
詩がそう呟いた途端、ぶわっとあたりの式神が増量した。
それに顔をしかめるペルソナ。
「以前から思っていたことだが....
詩、お前はそんなに死に急ぎたいのか___」
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