禁域/暴走
ルイはあまりの速さに目を瞑る。
感情をもつ暇もなかった。
しかし、一向に痛みが襲ってこない。
恐る恐る目を開けると、自分の肩に、式神が張り付いていた。
式神は直前でスピードを緩め、ぺたりとルイの肩に張り付いたのだ。
詩はルイに張り付いている式神を通して、棗の居場所を確認する。
それが終わると、ルイの肩に張り付いていた式神は、詩の手元に戻る。
「悪かった....ルイ」
詩はぽつりと呟くと、皆に背を向け闇に消えていった_____
翼は、愕然としていた。
初めて、あんな詩を見た。
いつもなら会うと笑顔で、「よー翼ぁ」なんて声をかけてくれていた。
しかし今は自分に声をかけることもなく、詩にしては静か過ぎる冷めた口調。
いつもの詩を知っているが、今の詩は、怖かった。
「―詩ちゃんを....詩ちゃんを.....引き止めないと」
しばらく詩の変わりように放心状態だった皆の中に、そんな声が響く。
みんな、はっとする。
「陽一、詩をとめるぞ...っ」
翼は決意した目で言う。
陽一はしかっりと頷いた______
4人は、さっきまで戦っていたことを忘れ、詩を追う。
詩ちゃん....なんで....なんでそんなに、自分を犠牲にしてまで何かを守ろうとするの?
いつも、詩の背中を見ると不安になる。
去っていくその姿が、もう二度と見られないんじゃないかって.....
もう、その笑顔が見れないんじゃないかって......
詩ちゃんは、闇の中に差し込む一筋の光。
その光は、こんな私たちにいつだって希望を与えてくれた。
その光を、なんとしてでも失いたくない______
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