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禁域/暴走



詩が迷いなく足を進めたのは、花姫殿の地下。

式神たちを偵察にまわらせ、裏口を見つける。

目立たないように人目を避けて動く。

皮肉にも、任務で鍛えられた。

血をわざわざ洗い流す時間は、惜しく感じられたのでそのままだ。

手遅れになるかもしれないから______







無事に、警備の堅い花姫殿の敷地に侵入する。







―ここか.....






罰則など、そんなことを考えている暇はない。

詩は小さな木戸を開け、中へ入った。

途端に、体中が暑くなった。

今までに経験したことのない感じだ。




―これが、中等部校長の力...





前に進むにつれて、それは増す。

気が付くと、詩の周りに白いものが舞っていた。

自分では、出そうなんて微塵も思っていないのに、そこには無数の式神が舞っていた。

アリスが制御できていないのだ。

冬にもかかわらず、詩は汗ばんでいた。

制御しようとしても、なかなかうまくいかない。

これは、自分の意思がきかなくなりつつあるということ。

詩は焦りに似たような気持ちを抱えながらも、着実に足は進めていった。

任務で結界師とアリスを使ったときや、紛失事件で志貴が侵入したときとはまた違う感覚。

あの時は、ただアリスが使いやすくなった、程度にしか思わなかったが、今はそれどころじゃない。

さすが、学園を守る結界の持ち主....




「ハァ、ハァ、ハァ....」





息も荒くなってきた。

それとともに、詩の周りを飛び回る式神を通して、多くの感情が詩に入り込んでくる。

多くの人の心の声が式神を介して詩と共鳴を始める。

頭の中に反芻して響く声。

情報量が多すぎて、頭痛が襲う。






―この学園はいばらの園.....

外の世界からみればキレイな花園でも、内側は棘だらけのいばらの檻.....






―誰だ?

この地下に染み付いた、不気味だけどどこか悲しい声。

一瞬、幼い子供の姿が映った。

詩ははっとする。

一瞬だったが面影があってわかった。

あれは、そう、ペルソナの幼少期........

ペルソナは、ここにいたのか....?





―燃え盛る炎....

それを呆然とみている.....紅い瞳の少年。

「俺がやりました.....俺が火をつけました」




「―棗はただみんなを守ろうとして....」

「....棗は葵ちゃんを守ってあげれなかった自分を許せなかったんだと思う

だからたとえ、この火事の裏にどんな理由がかくされていようと、こうなったのは自分のせいだっていう気持ちが消えなくて......」



―大切なものを守る旅に、棗と一緒に......






―これは.....棗と流架の....過去!?

棗に.....妹が?!






棗と琉架がみた赤い炎に染まった町の景色を、詩も見ていた。

棗の学園に来た理由や、花姫殿の地下の秘密まで一気に詩は知ることとなった。







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