紅い式神/乱舞/任務
詩が最後の式神を出そうとしたとき......
―ザザッジーッ
耳に入っている東堂からの、指令の声が届くイヤホンが細かに反応した。
「―東堂だ」
その声に詩は、式神を出そうと意識を高めていた気を抜く。
「この際だ。例のアレ、試してみなさい」
東堂の今までにない楽しそうな声。
詩の様子をモニタリングしていた東堂は、過去最高に興奮していた。
東堂の目に映る詩のアリスは、まさに華麗なショーだった_____
「....」
詩が無言の肯定を示したとき、東堂は満面の笑みを浮かべた。
それと共に、詩の手のひらの上には、今までの人型の式神ではなく、犬型の式神が現れる。
詩はそれに、ふっと息を吹きかけた______
その途端、部屋の中に犬型の式神を中心に突風が起こる。
―ぶぉぉおっ
それは竜巻のようになって、あたりのものを吹き飛ばした。
幹部達は家具にしがみつき、立ってるのがやっとの状態。
詩はといえば、突風の中心で、びくともせずにたたずんでいた。
―びゅぉぉおっっ.....
―ガシャンッ
風の圧に耐え切れず、窓ガラスが音をたてて割れた。
そして、窓の近くにいた幹部と部下の2人が、風によってそのまま外へ吹き飛ばされた。
「あぁぁぁぁあああ!!!!」
2人分のそんな悲鳴が聞こえたかと思うと、すぐにそれは遠くなった。
ここはビルの最上階だから、そういうことだ。
しばらくして、徐々におさまる風。
1人の幹部は、地獄のような突風から助かったと、へなへなとそこへ座り込んだ。
しかし、顔を上げた瞬間......
「あ....ぁぁぁぁぁああああ!!!」
狂ったような叫び声をあげた。
その声へと、他の幹部らの視線が集まる。
その瞬間、四方から同じ悲鳴があがる。
また、悲鳴をあげることを忘れ、あんぐりと口を開け放心状態の者もいる。
最初に叫び声をあげた幹部の目の前。
そこには.....
「....ハッハッハッハッ、」
そんな荒い息遣いが聞こえるとともに、漂う、獣臭_____
.