紅い式神/乱舞/任務
その後の詩の仕事ぶりは早かった。
廊下にでると、片っ端から部下たちを式神で切り付けていった。
詩が通るたびに紅い血のしぶきがあがり、人が倒れていった。
皆、恐怖にかられ、腰をぬかしにげることもできなかった。
銃を乱射する者もいたが、パニックになり、1つも詩にはあたらなかった。
逃げるまもなく、銃口を向けるまもなく、声を上げる間もなかった。
それは、一瞬の出来事にすぎなかった。
詩の周りでは、常に紅い式神が踊り狂うように舞っていた。
詩は何をするわけでもなく、ただ、いつものようにポケットに手を入れ、廊下の真ん中を平然と歩いているだけ。
学園に戻らなければというはやる気持ち。
式神は命じられなくても、詩の通る道の邪魔になるものを排除するかのように、動いていた。
次々と人が絶えていく。
それから目をそらすかのように、詩はただ足元を見つめて歩いていた。
返り血が顔に飛び散っても、詩は気にすることなく、歩み続けた。
目指すは、最上階の幹部たちの部屋______
その頃、最上階の幹部達の部屋では....
「―なにっ!? 1人の男が侵入しただと!?」
幹部達が慌しく会話していた。
「アリスで、下はほぼ全滅との連絡が.....―それで、そっちの状況は?....―ドサッ―.......おっオイ!返事をしろっ」
部下が連絡をとっている。
「アリス?しかもひとりだと?」
「早く情報をっ」
「そっそれが、どことも繋がらないんです....電源を切ってはいないので、もう....」
部下は俯く。
「なんだと!?っくそ」
「なめたことしやがって!」
「幹部!早く避難を!」
部下が焦った様子で言う。
「チッ....」
幹部の1人は舌打ちをし、奥歯を噛みしめ部下の後を追って扉の前に立つ。
部下が扉を開けた。
その瞬間、
―ドサッ
目の前にいた部下が倒れた。
幹部は後ずさりする。
その部下の首からは、大量の血。
自分も返り血を浴びていた。
部屋にいた幹部や数人の部下は冷や汗をかく。
扉の前には、返り血まみれの若い男。
詩だった。
詩は初めて顔をあげる。
「なんだ、こいつ幹部じゃねえじゃん」
―ざしゅっ
詩は目の前に倒れた部下を蹴り上げ、部屋に足を踏み入れた。
その瞳は、かつてないほど冷め切っていた。
考えるのはやめていた。
そのほうが楽だ。
自分がしていることに目を向けたら、壊れてしまいそうになる。
もう、ここまで来てしまったんだ。
後戻りなんて、とっくの昔にできなくなっていた。
これが、俺が選んだ道なんだ。
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