余興/新年の宴
「仮面の君って、ペルソナだよな.....」
眉根を寄せる詩。
「ええ。何の話かわからないけど、姫様は相当不機嫌でいらしてるわ」
「ペルソナは何をしに......」
詩は考え込む。
「きっと、明日の花園会に何か、考えているのかと....」
「ペルソナが関わるとなれば......花姫殿の地下?」
ひとり言のように呟く詩。
それを静かに見つめる静音。
「.....このこと、櫻野くんたちには話していないわ」
静音は詩に背を向け、ゆっくりと小さな窓のほうを向く。
「なぜか、あなたには知らせなきゃいけないと思ってしまったの」
静音は溜息を吐き出しながら言う。
そう言っている間にも、詩の顔つきはどんどん神妙になっていく。
「でも、何か察したからといって、危険なマネは絶対しないで。
私もあなたに言うか言わないか迷ったわ。
言ったらあなたは....」
「姉さん、心配しなくても大丈夫だから」
静音の声をさえぎり、詩は言う。
静音はすっと詩のほうに向き直る。
そこには、いつものようにハハっと笑う詩。
それでもまだ静音は、詩への心配をぬぐいきれなかった。
果たして、これは伝えてよかったのかと...
それに気づいた詩は、表情を変えることなく言う。
「俺、あそこにはどーやっても近づけないし____」
―詩が学園の中でただ1つ、自由に出入りできない場所。
それが、花姫殿の地下。
それは詩の、“式神のアリス”がもつ性質が影響していた。
詩のアリスは他のアリスとは例外で、結界の中では使いやすくなる。
ただでさえ強い詩のアリスが、結界でさらに強く、否、危険になる。
それを危惧した学園は、もし近づくでもしたら罰則、ときつく花姫殿から詩を遠ざけているのだ。
それをよくわかっている静音は、
「それもそうね」
と、少し表情をゆるめた。
「このことを詩に話したこと、私に後悔させないでね」
念を押すように静音は言った。。
「もちろん。教えてくれてありがとな」
詩は頷き、静音より一足先に談話室へ戻った。
その後姿を、今も心配そうに見つめる静音_______
そして、一方の詩はというと......
―ペルソナは、花姫殿で何をしようとしている?
―花姫殿の地下といったら、ルイたちの懲罰部隊.......
クリスマスパーティーの時に感じたいやな予感と、何か重なる不安を覚えた詩だった______
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