余興/新年の宴
「わーー! 詩くん着物似合ってるねーっ」
高等部の寮に、黄色い声が響く。
「うわっ」
詩はたくさんの女子に囲まれて、あたふたしていた。
人気者といえど、女子に囲まれるのだけはやはり慣れない。
「ね、一緒におせち食べようよ」
「あっちの席あいてるよー」
「あたし隣ねー」
「ずるーい!私も詩くんの隣ーっ」
女子たちは口々にそう言い、詩はあっという間に談話室へ連れていかれる。
するとそこにはもう、男子の大半がきていた。
「おう!詩ー」
「何だーもう予約済みか?」
「せっかく今日は詩とゆっくりしゃべれると思ったのになー」
「相変わらずモテんなーお前は」
男子たちはそう言って女子に囲まれる詩をからかう。
「ばっか!ちげーよ」
慌てて言い返す詩の反応に、また笑いが起こる。
新年早々詩のまわりは笑いであふれ、すでににぎわっている談話室だった。
そんな中、ふと皆の視線が談話室の入口に集まる。
秀一と昴と静音だった。
「よー!秀、昴、姉さん!」
詩は囲まれている皆の間から顔を出し、手を振る。
3人はうなずき微笑む。
「もう着物が乱れてるわね、詩」
「あ....ほんとだ」
詩は静音に言われて気づく。
「来なさい。いい加減あなたも代表の自覚を持ちなさい」
―パチンッ
静音は指を鳴らした。
すると、詩の体はひとりでに動き、静音についていく。
「あっわっ....ちょ、ちょっと!」
そんな詩のうめき声と共に、静音は来て早々退室していった。
―別室
静音は詩の着物を着付けし直していた。
「ありがとなー姉さん」
同い年とは思えない落ち着きをもつ静音のことを〝姉さん〟と呼んでいる詩。
詩が思うに、静音は自分よりずっと精神年齢が上なのだ。
しっかりしていて頼れる静音は、そう呼んでいる通り、詩の姉のような存在である。
「これくらいどうってことないわ.....それより......」
きゅっと紐を結び終わり、静音が詩に向き直る。
「何か、あったのか?」
詩は核心にせまる。
静音が別室にまで呼んだ、それなりの理由を聞かなければならない。
いつもと静音の様子が違うことにはとっくに気づいていた。
「....姫様のところに、仮面の君が来たわ」
「っ.....」
静音の一言で、詩の顔つきは変わった____
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