仕舞われた思い出
いつの間にか、〝柚香〟〝先生〟と書かれた相合傘には、特力家系図が付け足されていた。
やはり何か感じているのか、2人の名前の下には、〝蜜柑〟と書かれている。
2人の、子供として......
詩は、わきあがる感情を抑えるのに必死だった。
ちなみに詩は、殿の弟として、特力家系図にのっていた。
そして、壁の恋愛系落書き、特力家系図、アルバムの話題から、話は変わって........
〝みんなが学園に入学したのは何歳?〟
という話題になっていた。
翼や美咲が3歳に入学したのに対し、殿は中学に入ってから。
それぞれ、学園に入ることになった理由を話していた。
そしてついに、詩が話す番になる。
「そーいえば俺、詩の小さい頃の話あんま聞いたことねーなー」
殿が記憶を辿りながら言う。
「まーなー」
これが始めてかもなと、詩は笑うのだった。
「俺が学園に来たのは、5歳の時」
詩が思い出すように言う。
「ま、普通だな。詩のアリスなら」
殿が言う。
「そうだな」
「じゃー詩の親のアリスって何だったの?
詩のアリス珍しくてすごいしさ、親のもすごいんだろな」
翼が言う。
「....俺の親は、アリスじゃねーよ」
少し俯きがちに言う詩。
「え、そうなん?」
蜜柑をはじめとし、みんな驚いている。
「うん、だからさーアリスのことが理解できないみたいで......」
そこで詩は言葉を濁す。
「理解できないってー?」
皆、首を傾げる。
「俺のアリス気味悪がられて、学園には押しつけられるカタチできたんだ」
ま、あたりまえかこんなアリス......
と、詩は寂しそうに言う。
「そんな....詩先輩のアリス、すごいやん」
「そうだよ!俺、詩のこと尊敬してるんだぜ!」
「式神がなきゃ詩じゃねーしな」
皆は詩に、当たり前だと声をかける。
その言葉を受け取って、改めてあの人が、先生がくれた居場所に救われていると感じた。
「ありがとな!お前らがそう言ってくれるから嬉しいよ。
俺も自分のアリスが好きだ」
詩はいつものように笑い、すかっと言い切った。
その笑顔にまた皆がつられる。
それを遠くから見つめるのだっち。
彼の過去を知ってるが故に、今の彼を見て嬉しくなる。
みんなが家族のようなかけがえのない存在。
個性を認め合って、分かり合って、お互いの足りないものを埋めあって、笑い合う。
それが、仲間という存在________
先生が残してくれたもの。
どうかこの笑顔が、なくなりませんように........
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