仕舞われた思い出
アルバムは、かなり昔のものまであった。
初等部の頃の翼、美咲、メガネ。
それに加えた殿や要。
のだっちの写真があったが、今と変わりなく年齢が読めない。
さらには、ナルと岬が初等部の頃の写真まで。
こちらは詩もネタになるな、とにやけた。
勿論詩の写真もあった。
中等部の詩と殿が肩を組んでいる写真。
詩が女の子に囲まれている写真などもあり、常に詩のまわりには人がいるようす。
それらをみて、みんなあーだこーだ言う中、気になる写真がでてきて、温度感が変わる。
みんなが見ていたのは、ある女子生徒と先生の顔が、黒くシミになりわからない写真。
詩はまたも写真に釘付けになる。
この写真が出てくることは予想していたが、こんなにも陰湿なことを誰が...
みんなはなんだか気味悪がって、それ以上その写真に触れることはなかった。
しかし蜜柑だけは、その女子生徒の名前が“柚香”と書かれているのを見つけ、じっと見つめていた。
やはり、何か感じるものがあるのだろうか...
詩もまた、そんな蜜柑の背中を見つめるのだった。
「これ、ナルだー」
「のだっちもいるー」
また、掘り出し物の写真にみんなが盛り上がる。
「これ、初等部の頃の詩じゃん!」
殿が声をあげるから、みんなの注目は一斉にそこへ。
一枚だけ残っていたソレ。
あの頃は写真に写りたがらなかったから、残っていたのが意外だった。
殿を含めたみんなが、詩の初等部のころの写真を見るのは初めてだった。
その写真は、女子生徒と先生とナルとのだっちと、その他特力生徒。
危力系がなかった当時、詩は特力だったという話はみんなきいたことがあったので、特力に写真が残っていることは納得できた。
しかし、その写真の中にいる詩は、同一人物とは思えないほど、今と様子が違った。
今のような明るくさわやかな詩の面影はなく、
カメラを向けられているというのに、笑顔はおろか睨んでいるかのような目つき。
殿と映る中等部の写真と見比べても、その違いは大きかった。
「うわ、これほんとに詩?
目つきわるすぎだろ」
殿は面白いものでも見るかのように、まじまじと見つめていた。
「で、この女の人、柚香って言うんだろー?」
翼が顔を黒く塗りつぶされている女子生徒を指差す。
ある一枚の写真に名札が写っていたという。
皆、興味津々だ。
落書きの名前と一緒だったから......
「この先生もー」
翼は同じく黒く塗りつぶされた先生らしき人を指差す。
皆、詩の言葉を待っている。
その中には、もちろん蜜柑もいて...
「あーこの先生.....昔の特力の担当だよ。
蜜柑と同じ、無効化の.....」
詩はさらりと言う。
蜜柑が顔をあげ、何かを感じたように落書きに視線を移す。
その様子を黙って見つめるのだっち。
「あっソレ、聞いたことある.....」
ふいに思い出した様子の殿。
腕組みをし、記憶をたどっているようだ。
「―それでどうなったの?その2人」
唐突に美咲が問う。
「んー…そん時俺まだガキだったからな.....そーゆうのよくわかんねー」
詩は頭をかき、笑って曖昧に返す。
本当はその先のことを知っている。
しかし、この場で簡単に言えるようなことではなかった。
なんとかその場をあしらって、詩は違う話題へとみんなを誘導するのだった。
___先生....柚香さん......
2人の生きた軌跡は、今もこうしてここに残ってます________
.