聖なる夜
「のばらー久しぶりっ」
詩はのばらの隣の席に移っていた。
「あ...っ 詩先輩...」
あいかわらずおどおどしているのばら。
のばらは、今まで詩とルイとのやり取りをただ眺めていて、まさか詩が話しかけてくれるとは思ってもいなかった。
「蜜柑から聞いたぞー
蜜柑と〝友達〟になったんだってな」
詩はニカッと微笑んだ。
「そっそんな...友達だなんて....」
のばらの頬がパッと赤くなる。
「なーに言ってんだ、話して一緒に笑いあっただけでもう友達ってゆうんだよ」
いつも言ってんだろ?
と、詩は笑う。
「蜜柑ちゃんは、素敵です.....棗君の気持ちもわかります」
のばらは、少し嬉しそうに言うのだった。
「よかったな、のばら」
詩はそう言って、やわらかく笑う。
つられてのばらも、安心するように微笑んだ______
「なんで〝パイ〟4つだけなんだろなー」
ふと、小さく颯がつぶやいた。
「そうだよねー別に危力系の分もあっていいのに......せっかく詩ちゃんがいるんだから」
それに続いてルイもつぶやく。
今フロアで行われているのは、〝組対抗パイ選び〟
各能力別クラスの代表がパイを選び、その中身によって来年の運を占うというものだった。
「それもそうだなー...じゃ、来年はかけあってみるよ」
案外簡単に詩が言うものだから、皆びっくりする。
「え、本当にいいの?」
颯が聞き返す。
「ま、決まったわけじゃねーけどやれるだけのことはやってみる」
詩はいつものようにはにかんだ。
「やっぱ詩ちゃんすごいねー」
ルイは関心する。
のばらも、嬉しそうだ。
詩のほうは、しばらく学園のイベントに参加していなかったぶん、ここまで危力系のことを考えるまで頭がまわらなかったのだ。
思いついていれば早く行動に移せたのになと、少々後悔。
危力系は、他の能力別クラスより、扱いが違う。
ただでさえ、個人個人が危険なアリスをもっているというのに、学園からのこの待遇格差から、また新たな距離がまわりとの間にうまれている。
詩は自分が何とかしなければと思い、総代表として考えているところだった。
今は、本部の人たちとも結構つながっているし、何とか頼み込んで、危力系の名前から変えてほしいと思っているのだった。
詩がいろいろと危力系について考えているときだった。
「....っ」
何かを感じた。
ただならぬ....殺気?
それと、嫌な予感。
「どーしたの?詩ちゃん」
ルイが様子のおかしい詩の顔をのぞきこむ。
「...何か、感じなかったか?」
「え...? 何かって...?」
ルイは首を傾げる。
「.....」
詩はしばらく考え込む。
それを黙って見つめるルイと、八雲。
「....ごめん、俺ちょっと気になることあるから行くわ」
詩はいきなりそう言って立ち上がる。
「え!?....ちょ、ちょっとどういうこと?」
慌てるルイをそのままにして、詩はその場を立ち去った。
「あ....いっちゃった」
空しく、ルイの声が響いた_____
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