秘密基地(棗side)
___あれは2年前
詩は病院にいた。
別に、珍しいことではない。
自分のアリスのタイプについてはよく理解している。
とはいえ、任務続きでまとまった休息をとれていないからか、体調を崩していた。
「ゴホッゴホッ....」
息苦しさと身体の重さで、最悪だった。
しかし、そんなことよりも詩は、今年もアリス祭に参加できなかったことのほうが不満だった。
頭の中で、初校長やペルソナへ向けた悪態を並べながら病院の廊下を歩く。
任務と言えば...
ふと最近気になっている“後輩”のことが思い浮かんだ。
―日向棗......
数ヶ月前に学園に来た危力系の後輩。
まだ小さいガキのくせに、やけにすさんだ目をするな、と思い気になった。
まるで誰も信用していない、その瞳。
気にかけ、話しかけてみるもことごとく無視で返される。
と言っても、任務で学園を留守がちにするおかげで話す機会はそんなに無いから、タイミングを掴むのも難しい。
同じ能力別クラスなんだから、ちゃんと話せればいいんだけど......
そう思って、角を曲がったときだった。
―ドン....っ
同じく角を曲がった人と鉢合わせをし、まともにぶつかってしまった。
2人とも、しりもちをつく。
「いっつー....っ」
と、声を上げたが見えたのは初等部の制服。
「ご...ごめんなー大丈夫か?」
そう言って慌てて立ち上がる。
と、その初等部生の顔を見て目を見開く。
「....日向、棗......」
今考え事をしていた本人だったので、詩は思わずそう呟いた。
日向棗は相変わらず可愛げのない表情。
そしてその視線は、そばに落ちている薬の袋に向けられていた。
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