藍石
いつの間にか、クリスマスパーティーの買出しは、棗への誕生日プレゼント選びへと変わっていた。
主役の棗は皆が買い物に行っている間、1人ぽつんと取り残される。
ベンチに座り、暇をしていた。
そこへ急に現れた姿に驚く。
「よぉ、棗」
すとん、と隣に腰掛けたのは詩。
なぜここにいると言わんばかりの棗の顔。
「驚かせちゃったか、わりーわりー」
そう言いながらも、悪びれている様子はなかった。
「きいたよ、翼にアリスストーン貸してやったんだってな。
お前らいつの間に仲良くなっちゃって」
詩は思い出して、嬉しそうに言った。
「....忘れた」
「相変わらず素直じゃないね」
そういいながらも、からかい口調なのがムカついた。
「そのアリスストーンで思いついたんだけど.....」
そう言いながら、詩はポケットから何かを探る。
そして、あったあったといいながら、それを棗の前に差し出した。
「これ....」
棗は詩の手のひらの上にあるそれを、まじまじと見た。
そこには、深い濃紺、藍色の石があった。
―アリスストーン......
「持っとけ。
これくらいしか思いつかなくてわりーけど
俺からの誕生日プレゼント」
柄にもなく少し照れた様子の詩をみて、ふと棗が細かに笑った気がした。
「らしくねー」
棗はそう、一言呟く。
「なっ....うっせーよ!先輩の好意なんだから、こーゆうのは有難くもらっとくのがフツーだろ」
詩は自分でもらしくないと思ったのか、目をそらして恥ずかしそうだ。
「...ありがとう」
小さく棗が言い、目をそらす詩の手からストーンを受け取った。
「俺の石なんて珍しいんだからなーっ大事にしろよ」
詩はそう言うと、立ち上がる。
「....ああ」
小さく棗が頷いた。
「俺は用があっからな。んじゃ」
詩は最後にいつも通りふわりと笑うと、相当照れくさいのか足早に行ってしまった。
棗は、人ごみに紛れ見えなくなるまで、詩の後ろ姿を見送った。
もらったアリスストーンは、ずっしりと重たく感じた____
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