危力系集結



「ここだな」

詩はそう言って、会議室の扉に手をかけた。

ガチャリ。



その取っ手をまわした瞬間に、何かを感じた詩。

一瞬にしてさっきまでのゆるんだ雰囲気が緊張感へと変わるのが、後ろにいた棗にも伝わった。

しかし、反応まではできず、

「棗っ危ない!」

という言葉と同時に、ものすごい力で体が引っ張られた。

扉の影に身がおさまったと同時。



―ヒュンッ




という、聞き覚えのある風の音。

その攻撃ともとれる一撃は、目標者を見失ったのか、開けた扉の向こう側の壁に鋭利な傷をつけていた。

まともにくらっていたら、皮膚が裂けていたであろうそれ。




珍しく怒っている雰囲気の詩が、その部屋へと入っていく。






詩に続いて入って、視界にまず入ったのは額にわかりやすく青筋をたてる、松平 颯。

風使いのアリスで、危険能力系に所属する中等部生。

棗にとってはその程度の認識だった。




「ご、ご、ご、ご、ごめんなさい...っ!!!!詩兄!!!!!」

颯はその場で崩れるように土下座する。

「バカ!あたってたらどうすんだ」



―ガンっ



鈍い音がし、頭を抑えうずくまる颯と拳をにぎりしめる詩。

そこはアリス使わないんだ....変な奴....

詩くらいならアリスで本気見せればすぐにおとなしくなるのに、と棗は思う。





「ごめんなさい、ごめんなさい!!.....だって、まさか任務終わったばかりの詩兄がこんなに早く来ると思わなかったし、棗だと思って」




ーガンっ




本日二発目の鉄拳。



「俺でも棗でも同じ、だめなもんはだめだろ。

ほんっとバカだなお前は」



呆れる詩に涙目の颯。




「でもアイツ最近調子ノッってるからムカついて....」



「こいつがムカつくのは俺もよっっっくわかってる。

でもお前のそのアリスで、誰かを傷つけるのは俺が許さない。

みじめな気持ちになるのは.....お前自身なんだぞ?」




昔、颯が同級生とケンカをして、そのアリスで傷つけた現場に遭遇したことがあった。

誰がみても、ケンカの理由に関係なく颯のやりすぎだった。

怒りと後悔とで震える身体。

もう、あんな思いはしてほしくない。



「二度とこんなことはするな、わかったな?」

詩の周りには感情とともに式神が激しく舞っていた。

詩が本気で怒っていることは誰の目にもわかる。

「わ、わかった....」

颯はしゅんとして、大人しく返事をするのだった。

唯一の慕ってる先輩に失望されてしまった。

自分が原因とはいえ、悲しかった。





そんなわかりやすく落ち込む颯をみて、詩はしょうがねぇな、と笑う。

こういうのをみると、昔の自分に重ねてしまう。





「反省したならいいよ、もう顔あげろ、颯」

さっきとは打って変わって、詩は颯の頭をわしゃわしゃと撫でる。

いつの間にか式神もいなくなっていた。

いつものやさしい先輩、詩が目の前にいて、颯は目に見えるようにぱっと笑顔になった。

「詩兄~~~!」

と抱き着く颯に、単純なやつ....と棗は思うのだった。

「おい、颯くっつきすぎだってば。ほんとに反省してんのか」

そう言いながらも、弟をみるように詩の目はやさしかった。





「もーう!うるさいわよアンタたちーー」

じゃれる2人をみて、見かねて声をかけるのは周ルイ。

詩と同級生の危険能力系、アリスは呪い。

ルイの他にも、八雲とのばらがいて、これで危険能力系のメンバーはそろったらしかった。



「あーごめんごめん。悪かったって」

詩は抱きつく颯からするりと抜け、ルイの近くのイスに腰をおろす。

棗は先輩たちをスルーし、一人窓際にいく。






長机に向かっているのは、詩とルイと八雲。

同じ危力系でありながら、こうして顔を合わせるのは久しぶりだった。

でもなんだかんだで長くなる付き合い。

学園の風潮とそれぞれが持て余してきたそのアリスのおかげで、他の生徒たちとは違う、特殊な関係だった。




同じ省かれた者たち。

周りからも、同じように厳しい目にさらされてきたのだから、目に見えぬ絆があることは自覚していた。




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