プール開き
「よお、棗」
詩はタオルを羽織り、棗の隣に腰掛ける。
「詩....」
流架同様の反応を見せ、棗は顔をあげる。
思えば、ちゃんと話すのは久しぶり。
「こんなところでサボリかぁ?」
そんなふうに言えば、むっとした表情が返ってくる。
「おっと怖い怖い。
わかってるって、体調わりんだろー?」
しかしそれすらにもむっとした表情。
「ったく、弱っちーなー
俺なんかピンピンしてるぜー」
詩は、自慢げに自分の筋肉を見せ付ける。
「ふぅ....」
棗は浅く溜息をつく。
「なんだよ、その反応。
冷てーなー」
今度は詩がむっとした表情を見せてみる。
「.....嘘ばっかり。
そんな体で本気で泳ぐとかばかだろ」
「なっバカってゆうことねーだろ?
仮にも先輩!年上っ」
詩はわーわー騒ぎ立てる。
「体とか関係ない。
泳ぎたかったから泳いだの!」
そんな子どものような言い訳を本気で言ってくるから棗はあきれることしかできない。
「お前も辛気くせぇツラしてねーで、少しは楽しめよ。
まあでも、蜜柑がきてからはわりと楽しそうだな」
詩は少し嬉しそうに言う。
「どこが...」
「ったく、素直じゃないんだから」
いつもの調子の棗に、ははっと詩は笑う。
「じゃ、そろそろ俺は戻って蜜柑とあそぼ~」
わざとらしく言ってタオルを放る。
「じゃーまたあとでなっ」
最後にそう、陽気に言って詩は皆の輪の中に入っていった。
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