プール開き
今日の体育は、小・中等部合同プール開き!
ここ最近ややこしい事ばかりで、すっかり心もお疲れモードやったけど
梅雨明けとともにじめじめ気分も
プールにいる間は楽しい気分ですべて流しちゃえーーー!
と、今日も蜜柑は元気。
そんな意気込みでプールに向かうと、先客がいた。
詩先輩だ.....
みんな、「わっ」と声をあげる。
詩はプールで泳いでいた。
その姿はとても美しかった。
水をかく、筋肉質な腕。
息継ぎをするときの呼吸。
そして、スピードも速かった。
蜜柑はそんな姿に釘付けになる。
「詩せんぱい、すごい....」
他の女子は皆かっこいいかっこいいとキャーキャー言っているが、蜜柑は違った。
詩の姿を静かに見ていた。
いつものおちゃらけている詩とはまた違う真剣な姿に、つい見入ってしまった。
詩先輩のこんな姿を見たのは初めてかもしれない。
そんなことを思っているうちに、あっとゆうまに詩は泳ぎきっていた。
「はぁ、はぁ、はぁ....」
よほど本気で泳いでいたのか、詩はかなり息切れしていた。
でも表情はとてもすがすがしかった。
ぬれた髪を掻き揚げるその瞬間が、新鮮だった。
いつも長い前髪で見えない表情が、今はあらわになっている。
とても気持ち良さそうで、いい顔をしていた。
プールサイドには小・中等部生が集まっていて、その姿に皆目を奪われていた。
その中には、櫻野、昴、静音もいた。
櫻野は詩の姿を優しく見守っていた。
昴も静音も同じだった。
相変わらず、周りからは黄色い歓声があがっている。
詩は、呼吸を整えプールサイドにあがる。
―ちょっと、本気なりすぎたかな....
そうは思ったものの、久しぶりに思い切りからだを動かせて、とても気持ちがよかった。
何か、心のもやがとりはらわれたようなスッキリした感じ。
表情さえも、久しぶりにオモテに出せてる気がする。
いつものように、隠す必要なんてなかった。
アリスだというのを忘れて、普通の高校生のように運動している気分。
こうやって体を動かすのは好きだ。
以前から机に座る勉強よりも体育が得意な典型的なスポーツ男子。
アリスでなければ、そんなどこにでもいるような少年として、学校へ通っていただろう。
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