希望/要がみる世界
「―お前だけだよ。
こうやって、話せるの」
静かに詩が言った。
詩がアリスの形について言っているのだと、要にはわかる。
「学園の人気者も、弱気になっていいんですよ。
むしろそっちのほうが安心します」
いつもは詩が元気づけるのに、今日はなんだか立場が逆だ。
「やっぱり今日の詩先輩、いつもの詩先輩じゃないですね」
要は優しい眼差しで言った。
また、心の中を見透かされているようだった。
「わりぃーな。
楽しい話とか、面白い話とか、今なんもでてこねー。
要の言うとおり、今日の俺どうかしてる」
詩は自嘲した。
そんなことは言っても、詩が寄りかかる窓から差し込む夕日で、詩は輝いて見えた。
「僕の尊敬する詩先輩は、強い詩先輩だけじゃないですから」
要はまた、微笑んだ。
詩は、その言葉に救われるのだった。
ここでは、要のそのやさしさに、なんでもゆるされる気がした。
肩の荷が少し降りたような気分だった。
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