希望/要がみる世界
「眩しいな.....」
詩は、梅雨のおかげで久しく見ていなかった、きれいな赤い夕日で染まる外を見て言った。
いや....
詩の視線の先には、蜜柑の姿があった。
ベアを大事そうに抱え、みんなと一緒に笑い、駆けていった。
詩には、その光景が眩しかったのだ。
「詩先輩....」
ふいに呼びかけられ、そちらを見る。
ああ、ここは要の病室だった。
病室には、要と詩の2人きり。
こんな時間は、久しぶりだった。
「なんだよ要」
いつものように微笑んで、詩は窓に背を向けよりかかり、要と目を合わせる。
「僕、うれしいな」
「そうだろうと思った」
詩は頷く。
先ほど、傷ついたベアを蜜柑が心をこめて直したおかげで、ベアの心境が変わったのだ。
初めて触れた、要以外の心。
最初こそとまどい、どうしていいかわからなかったベアだった。
けれど.....
「僕が君に注いだのは、命のかけらじゃない。
僕の希望だよ」
その言葉で、ベアは自分の魂を要に返すなんてバカなこと、思わなくなっただろう。
「詩先輩、先輩ともこうやって話せてうれしいです」
「ばーか、何を今さら」
照れたように笑った詩の顔を、夕日は照らしていた。
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